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「あ……」
どうしよう。制服のシャツがない。
「A?なにずっと下着で……え、なに。どうしたの?」
「シャツ、知らないよね」
「知らないけど…え、なくなったの?嘘でしょ?」
仕方がないからまたジャージのTシャツを着て、下だけ制服のスカートに着替える。手が震えているのが鬱陶しかった。
ひとみはポカンとしていたけれど、やがてその顔が歪んでいく。
「あり得ない!誰かに取られたんだよ、そうでしょ!?っ私、みんなに聞いてくる!」
「ひとみ、いいって」
止めようとしたけれどひとみは駆け出して行ってしまった。
多分、犯人は部員じゃない。カバンの中を調べてもきっと出てこない。この部活にそんなことする人はきっといないから。
にしても、困った。ここまで実害が出てるとそろそろ無視できなくなってくる。教科書も制服も親が買ってくれたもので、代えが効かないのに。
「…やっぱり、」
頭の中に浮かぶ2人の姿をかき消すように、強く目を閉じた。
*
「A、他のものは盗られてないの?」
「大丈夫。大したものは盗られてないよ」
「盗られたの!?信じられない…!A、心当たりは?」
「ほんとに平気。自分で何とかするから」
「ダメ!私もひとこと言わなきゃ気が済まない!」
「やめて!」
思わず大きな声で遮った。その反応が予想外だったのか、ひとみは目を見開いてキョトンとする。それにごめん、とひと言置いて俯いた。
「本当、平気だから。1人で何とか出来る。…ごめん、大きな声出して」
「っ……」
私よりもひとみが泣きそうな顔をする。くしゃりと顔を歪めたひとみに、強く抱き締められた。
「いつでも、何でも言って。助けたいの」
「…うん」
ありがとう、と華奢な体を抱き締め返した。
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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時