【完結】飛び降りようと思うのです【潔世一】

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消しゴムがない。

初めはそれだけのことだった。どこかで落としたのか、忘れてきたのか。分からないけれど、大した事じゃないと気にせずにいた。


でも次は大切に使っていたシャーペンが消えた。どこに置いてきたのか思い当たる所がなくて色んな所を探したけれど見つからなかった。

次はノート、また次は教科書。ここまで来ると困るようになって、誰かに盗られたのだということにようやく気付いた。


現国の教科書がなくなっていて、ギリ、と奥歯を噛み締める。



「A？どうしたの？」


「ひとみ」



まさか。いや、そんな訳ない。この子はそんなことをする子じゃない。

最近変わったことと言えば、ひとみと一緒に行動するようになったこと。でもひとみがやったとは到底思えない。



「…なんでもない」


「そう？あ、教科書忘れた？隣のクラスから借りてこようか」


「ううん。隣に見せてもらうから平気」


「そっか。何かあったら言ってよ？」


「うん。ありがと、ひとみ」



いいって！と明るく笑うひとみを見て、やっぱりひとみがやった訳ではないのだと言い聞かせる。疑うなんてひとみに悪い。



「ね、部活のことなんだけどさ」


「うん、なに？」


「私たち、来年3年になるでしょ？今のうちから勧誘かけておいた方がいいかな〜って」


「ああ、そういえば。ポスター作ろうか」


「うん！声も掛けに行こうよ、一緒にさ」



3年か。まだ実感が湧かないけれど、そのうちなるのだ。

3年になる頃、私たちはどうなっているんだろう。ひとみは潔くんと付き合うことになったりするのかな。分からないけど。

潔くんと言えばサッカーが恋人みたいなものだから、あんまり想像できない。



「じゃあ友達にポスターのデザイン頼んどく」


「うん！お願いね、A」


「任せて」



まずはこの消える持ち物事件を何とかしなきゃいけないんだけど。



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