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落ち着くようにと買ってくれたミルクティーのペットボトルを両手で握って、コンビニと外を隔てるガラスに寄りかかる。
「落ち着いた?」
「うん。あの…あなたは?」
「あ、ごめん。俺、潔世一」
「AA。一難高校の2年」
「知ってるよ。俺も一難の2年。学校で見かけたことあったから」
「え、マジか」
何で止めてくれたんだと思っていたけれど、知っている人が飛び降りようとしていたらそりゃ止めるか。
パキッと音を立ててキャップを捻り、甘くて冷たいミルクティーを喉に流し込む。潔くんはコーラをごくごくと勢いよく飲んだ。
「あの、さ」
「さっきのこと?」
「うん。よく知らない奴になら気兼ねなく話せるかもしれないし、ちょっと話してみない?どうしてあんなことしてたのか」
そんな風に言ってくれる潔くんには悪いけれど、理由なんて大したものじゃない。わざわざ話して聞かせるような楽しい話でもないし。
それをそのまま伝えると、それでもいいんだと首を振られる。
「あんなことしようとしてたって事は、大したものじゃない訳ない。良ければ、話して」
「うーん…」
苦笑して自分の手元に目を落とす。そうやって言ってくれるんだからと、少し言い淀みながら口を開いた。
何かあるとかじゃない。今の生活に不満も不備もない。高校生にして1人暮らしをさせてくれる両親もいて、不自由なんてひとつも無い。
学校生活だって可も不可もなく、友達だっている。学級委員で少し忙しいけれど、特別につらいことも無い。
絶望を抱くほど悪いことなんて無い。
ただ、欲しいものには少し手が届かない。
そんな生活に疲れたのだ。
死ぬほど悪いわけじゃない。でも惰性で生きていくには退屈で、少し窮屈で。
「もう…いいかなって」
「…そっか」
潔くんは途中で口を挟んだりせず、静かに話を聞いてくれた。
話終わってぼんやりと車の流れを眺める私の頭をふと、そっと撫でられた。驚いてそちらを向いた私に、潔くんは微笑む。
「お疲れさま」
なんでだろう。涙がじんわりと滲んできて、視界が滲む。
潔くんは何も言わずにただ、ポロポロと涙を流す私の頭を優しく撫でてくれた。
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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時