【完結】飛び降りようと思うのです【潔世一】

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「ただいま〜」


「お邪魔します」


「おかえりなさい。あら世っちゃん、お友達？」


「うん。部活のマネージャーなんだ」


「そうなのね。お名前は？」


「AAと言います。お邪魔してしまってすみません」



潔くんのお母さんはほわほわした方で、優しく笑っていいのよ、と首を振る。靴を脱いだらそれを揃えてくれて、ありがとうございますと頭を下げる。

ちょうどそこに扉の向こうからお父様もいらっしゃって、私を見て目を丸くした。



「彼女さんか！？」


「と、父さん！違うって！部活のマネージャー！」


「あら照れちゃって。でも本当、嬉しいわぁ」



サッカーにしか興味ないんだもの。そう言って笑うお母様に私も笑う。ほんとですよね、なんて。

通されたリビングを失礼にならない程度に見回して、その暖かさに目を細める。こんな優しい家庭に私も居たかった。

サラダとピーマンの肉詰めに、油揚げとネギのお味噌汁、ご飯、お煮付け。

温かい家庭の料理なんて食べるのは1年半ぶりとかだ。それもこんな優しい人達に囲まれて食べるなんて、もっと久しぶり。

それは見た目通りにとても美味しくて、思わず泣きそうになってしまう。



「どう？美味しいかな？」


「はい、とっても」



胸がいっぱいで、思わず顔を隠すために俯く私をご両親は優しく見守ってくれる。



「Aさんはマネージャー、いつからやってるの？去年はいなかったんじゃなかった？」


「この夏からやらせてもらってます。潔くん…世一くんに誘われて」


「そうだったのか。同じクラスだったのかな？」


「いえ、そういう訳ではないんですが…ちょっと、助けられて」



文字通り命を救われた。でもそんな話をする訳にいかないから適当に濁すと、どちらも突っ込まずにいてくれて。



「これからも仲良くしてね」


「はい。もちろん」



あったかい。なんだか泣いてしまいそう。ぎゅっと喉を締め付ける苦しいのを飲み込んで、笑った。



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