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垣根に隠れるように存在する裏口は庭の端に繋がっていて、砂利が敷き詰められた庭を囲むように様々な木が生えている。
こまめに整備されている感じはないが、綺麗だ。
縁側を更にガラスの引き戸で外と仕切られている。
「素敵でしょう?大正時代の建物を改築したんですって」
「ああ、やっぱり…」
「誰もいないか見て来ますね。私が入れたこと、内緒ですよ」
「はい。ありがとうございます」
悪戯っぽく笑って肩を竦める彼女に頷いて、パタパタと駆けて行く背中を見送る。
今まで見て回って来た2軒は廃墟と売り物件の更地だったが、今回は立派な屋敷だ。あんな少女が住んでいる訳だしここの線は薄いか…
ーー今思えば、あの不思議な雰囲気に惑わされていたのだと思う。
「ごめんなさい、粗茶しか出せないんだけど…」
「いえ、お構いなく」
小さな家ほどの広さがある二階建ての離れに入ると、意匠の凝らされた磨りガラスや鴨居などが目に入る。
申し訳なさそうにする背中に付いて入った部屋にも大正の名残であろう意匠が残り、部屋は畳だ。
「母家の中は洋風なんだけど、ここまでは手が回らなかったみたい。こっちの方が大正の物が残ってると思ったけど、どう?」
「はい。ありがとうございます。あの、少しお話を伺っても?」
「はい、勿論」
笑って頷く彼女を騙すようで心苦しくもあったが、任務の為だと言い聞かせて向き直った。
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ララ - 頑張って下さい。 (4月29日 16時) (レス) @page7 id: c53479bd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2023年10月11日 17時