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「で、ラブレターが入ってたわけ!」
「……優、私を優先してくれるのは嬉しいけど、その差出人の子がかわいそうだよ」
「それは……その、」
ここに来るまでの脈絡を話すと、Aはそう言った。図星をつかれて返す言葉が何もなかった。俺のしたことは、やっちゃいけないことだったけど。でも。
「でも、坂田の話を聞く限り、好きな子いるみたいだし。告られて断って、相手を傷つけちゃうのが嫌って言うのは、ちゃんと伝わったよ」
「優は優しいね」と、優しく頭を撫でてくる。実を言えば、俺はこうされるのが好きだった。彼女の温もりを一番に感じ取れて、今目の前の彼女が俺だけを見ていてくれるから。
「私、優の恋応援するからね!」
「え……あ、うん。ありがと、」
俺の好きな人は、目の前の君なのに。って思ったことは、黙っておくことにした。
「でも、差出人かいてないんじゃ、『行けなくてごめんね』って言うこともできないしね」
「センラが書くこと大事だねーって言ってたよ」
「恥ずかしいのはわかる気もするけど、それも一理あるよね」
今聞いたら、きっと傷つくことになりそうだけど、気になるのもまたそうだった。彼女の好きな人。聞くばっかりで、全然自分の恋愛相談をしてくれない。俺だってずっと気になっているのに。
「Aはさ、好きな子おらんの?」
意を決して聞いてみた。ちょっと、いやものすごく怖い。
「……私の好きな人?え〜、秘密!」
「いるかいないかでもだめなん?」
「………いるよ。」
その時、俺は少し嬉しかった。そして同じように悲しかった。
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作者名:天音 | 作成日時:2022年12月14日 19時