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出来ることならば、夢でいいから彼女にまた会いたい。そう思いながら適当にメニューに目を通していると、彼女がよく好きだと言って食べていたオムライスが目に入る。「ふわとろでおいしいんだ〜」って言いながら美味しそうに食べていた。一口ねだってみてもくれなかったんだっけな。
「何笑ってるん?決めれないの?」
「俺が笑って悪いのかよ……てか決めたし」
「なににしたん?」
「オムライス……」
俺がそう言うと、目を見開いた坂田。いや、俺だって無意識で言っちゃったし。すると坂田が俺の持っていたメニュー表をひょいと取って、数ページ、ページをめくった後に、指をさしながら俺に見せてきた。
「ここにハンバーグあるのに?」
「え、あぁ、うん」
坂田は口を開けたまま固まった。しばらくしてハッとしたように動き出し、近くにいた店員さんに声をかけて坂田は注文していた。俺は食べ物がくるまでスマホをいじっていることにし、今日の夢について調べていた。目に入ったのは「過去に切り捨てた愛情や、抑え込んでいる愛情を意味する」と書いてあった。それが嘘か誠かはわからないけど、彼女に対しての愛情は抑え込んでしまっているのかもしれない。
「愛情ね……」
「……お墓参りは行ったん?」
「………まだ、行ってない。いや、行けてない」
「そっか」と悲しそうに言う坂田。坂田とAは仲が良かったから、坂田も彼女の死は傷つくところがあったのだろう。
「坂田は行ったの?」
「うん。だいぶ前にね」
次は俺が「そっか」という番だった。運ばれてきた料理に、気だるげにスプーンを取った。
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作者名:天音 x他1人 | 作成日時:2022年11月26日 21時