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白いシャツに、白と緑のラインが入ったチルデンニットを着る。黒のスキニーを履いて、左腕に、彼女から貰った腕時計をつけた。シャツの襟にはクローバーの刺繍が施されているもの。スマホと財布をポケットに突っ込んで、俺はある場所へと向かう。
「ついた……」
結構時間がかかってしまったけど、ちゃんと彼女のお墓がある場所へ俺は向かった。「雨野」と書かれた墓石に、線香を立て俺は手を合わせる。ちゃんと来れたことは、本当に良かった。やっぱり、彼女は来てほしかったんだと、改めて思う。
「ねぇ、A」
今までの、彼女との思い出が次々と溢れかえってくる。
「いつまでも、Aを想うよ。ずっとね。」
涙が溢れそうになるのを、俺はぐっとこらえた。だから、Aもずっと俺だけを想っていてね。とそう告げる。俺のひとりごとだけれど、周りには誰もいなかったから、気にせず話しかけ続ける。決して返事が返ってくることはないけど、きっとAは聞いてくれている。
「…でも、最後くらいはさよならって言わせてほしかったな。」
さよならさえ言えないままで、夢の世界は、彼女は俺の目の前から完全に消えてしまった。残ってるのは、彼女との記憶だけ。夢の中じゃあんなに笑ってくれていたのに、今じゃ、Aがどんな顔して聞いてるかなんて、わからないよ。
「俺、ちゃんとAに会いに来たよ」
俺はあの日々を抱いて、明日へと歩き出すから。
「ちゃんと見ててね、A」
いつまでも、キミを想うよ。
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作者名:天音 x他1人 | 作成日時:2022年11月26日 21時