夢の中で会いに来て。【urt】 (ページ26)

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はっとしたように、俺は目を覚ます。

「なんで、なんでだよ！！」

朝起きて初めに言った言葉は、自分でも信じられないくらいの声だった。

「さよならって、言えてないんだよ……」

さよならを言う前に、俺と彼女の世界は終わりを告げた。大声で叫んだって、もう二度と戻れないのに。なんで、どうして、それしか俺は呟くことができなかった。ぽた、ぽた、と布団にシミができて濃くなっていく。あぁ、俺は今泣いてるんだ。

「わかってるって……でも、」

心以外は、分かってるんだ。最後に、最後だったのに、肝心な時に彼女にお別れを言えないなんて。

「こんなの、あっていいのかよ……」

彼女が亡くなったあの日も、俺はさよならを言えなかった。傍にいることさえ、できなかった。それなのに、もう後悔させないでくれ。しばらく悔やんでいると、がさっと音が鳴る。音の方を見ると、机に置きっぱなしにしていた本が落ちたみたいだった。

「なんで、これがここに……」

俺の机にあったのは彼女が好きだった恋愛小説。パラパラと軽くめくると、俺はあるものをみつけた。

「……うそ、」

本に挟まれていたのは、俺とAの写真だった。アルバムから一枚消えたなって思ってたら、こんなところにあったのかよ。これを読んでいたのは紛れもなくAだ。そして、この本はもう、Aには読んでもらえない。

この写真(SHIORI)は、同じ場所(ページ)でずっと動かないままなんだ。なんで、どうしてと問いかけても、聞こえない君の声。そして、その本を抱きしめながら、俺は思い出した。彼女が夢の終わりで俺に言ったことを。

『次はわたるから会いに来てね。』

俺はその本を置き、着替えを始めた。