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「明晰夢……?」
「明晰夢はね、夢だと直感的にわかる夢のこと。「あ、今自分は夢を見てる」って、分かる夢のことね」
「うん、それで?」
「明晰夢の特徴は、なにかわかる?」
特徴、と俺は呟く。しばらく考え込んだけど、さっき彼女に言われた直感的に夢だとわかることくらいしか、俺には浮かばなかった。
「明晰夢は、何事も、自分の思い通りのことが起きるんだよ」
「私とわたるが、こうやって夢の中で今会えているのも、そのおかげ」
ひとしきり話し終わったところで、ここからが問題。と彼女は言う。彼女が口を開こうとするのを、俺は必死に止めた。
「じゃ、じゃあ。Aは今、Aってこと?俺の大好きな、Aなの?」
驚いたような素振りを見せる彼女は、うんと頷いた。それに、反射的に俺は、彼女を抱きしめる。もう離さないと言うくらいに。力強く抱きしめた。ぽちゃんと水の音が聞こえて、彼女が驚いたようで、手に握っていたやまだぬきを落としてしまったらしい。音までも、ちゃんと水なんだなと、のんきに思う。
「あのね、私とわたるがこうやって夢の中で会えるのは、今日が最後なの。」
「え、なんで、」
「時間、きちゃうの。」
彼女は着ていたワンピースのボタンを二つ外し、肩を出した。
「ちょ、なにして、」
胸元が見えるくらいまで、彼女は肩を出す。こっちみて、と言われて、しぶしぶ向いた。彼女の胸元辺りに、デジタル時計のような数字が、時刻を刻んでいた。「00:03」と書かれていて、残りが3分なのだということがわかる。
「この世界のカウントダウン。簡単に言えば、あと3分後にわたるは目を覚ますの」
「それがこの世界の終わり、私たちの最後だよ」と、悲しそうに彼女は言った。
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作者名:天音 x他1人 | 作成日時:2022年11月26日 21時