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「ね、どう?おいしい?」
「うん、うまいよ。今日もありがとね」
そういうと「えへへ」と照れくさそうに笑う彼女。昔は、どうかこのままいたいと思うほど、この時間は心地よいものだった。明日なんてやってきてほしくないと、心から願った。
願っていたんだ。
もしかしたら、彼女の難病で明日俺の前からいなくなってしまうのかもしれない。その恐怖がずっとぬぐえなくて、朝起きてから見る、彼女の姿と寝顔には、とても安心していた。でも、結局は傍にいてやれなかった。
「……ねぇ、A。Aは本当に、Aなの?」
俺の言葉を聞くと、彼女は驚いたように目を見開く。しばらくすると、クスクスと笑っている。
「なーに言ってんの!わた…は、………だ…ほん…に………」
「え、?なんて、言って、」
▽
「うらたん!」
「うらたさん!」
眼を開けば、焦ったような顔をした三人が俺の顔を覗いていた。俺の視界は少し滲んでいて、見えにくかった。目を擦りながら起き上がると、俺はきっと眠りながら泣いていたらしい。
「よかった……うらさん倒れたから、びっくりしたんやけど」
「ごめんごめん。……軽く寝れたし、もう大丈夫だよ」
「うらたん、念のため今日は休んどこ?俺らも心配やし……」
センラの言葉に俺は「でも……」と言葉を濁す。だけどもし、俺が頑張ったところでセンラやまーしぃ、坂田を心配させてしまうのではないか。
「今は大事な時期やし、念のためだから。」
「もし帰りたくないんなら、ここで横になっとけばええんやない?」とまーしぃが言う。それなら、と俺は了承して、ここにいることにした。
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作者名:天音 x他1人 | 作成日時:2022年11月26日 21時