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風呂から上がり、髪を乾かさないまま、俺はソファーに座りスマホを弄くる。久しぶりに、と開いたフォトアプリは、彼女の写真でほとんど埋まっていた。そして、彼女が亡くなる前に撮った彼女の写真、その日は今となれば彼女と俺の最後のデートだった。その日を境に、写真は途切れている。
「ここ懐かしいな……うわ、かわい、」
思わずそんな事を口からこぼしてしまう。それくらい彼女との思い出は大事なもので、宝物だった。一枚一枚の写真を噛み締めながら右から左へとスクロールしていく。ぽっぺたにクリームをつけている写真や、こっそりとった彼女の寝顔。
しばらくずっと見ていると、スマホの画面の上の方に、通知が入る。坂田からのメールだった。それをタップして、そのアプリに画面が切り替わる。
『今日はありがとう次どこ行く?』
簡素な文章で短く送られていた。あまり寝れなくなり、仕事にも気が回らなくなっていたので、仕事は最低限しか入れていなかった。どうしても外せないと言われれば、その仕事は了承したし、その日の前日は布団に入った。結局は眠れなかったのだけれど、一様いるぶんには居るようにしてたし。
この前は寝ずに仕事3日間入れて、ぶっ倒れたんだけど。
『坂田が暇なときでいいよ』
それだけを送り、坂田とのトーク画面を閉じた。下の方に見えたのは、彼女のアカウント。タップしてみると、俺と彼女が最後にデートをした5月18日から途切れていた。俺がその日送ったそのメールは未読のままで、そして、もう一生既読がつくことは無いのだろうと、悲しく思った。
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作者名:天音 x他1人 | 作成日時:2022年11月26日 21時