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「カルシファー、寒いからおいで」
開けていたバルコニーの手すりの上に私が飼っている白いペルシャ猫がいる。名前を呼べば翠の眼が不思議そうにこちらをみる。そしてそのまま先程みていた方向に顔を向けた。いつもなら名前を呼べば「にゃあ」なんていいながら、頬を寄せてくるのに。
様子がおかしいなと思った私は、嫌になるくらいふかふかなソファーから立ち上がった。この部屋にあるものは、すべて私の好みのものなんてない。深い赤を貴重として金が所々あしらわれているこのソファーはギラギラしてて好きじゃない。
手すりの上に乗っているカルシファーの頭を撫でると、カルシファーは気持ちよさそうに目を細めた。
「だーれだ」
不意打ちだった。気配がしなかった。後ろにいる人は楽しそうにそう言う。目元を手で覆われており、視覚から入る情報は制御されてしまっている。耳から入るのは後ろにいる人のくすぐったい吐息だけだ。
「ふふ、わからんよね」
そういうと“彼”は私の目元から手をはずした。その隙を見計らって私は部屋の中に行こうと走った。それに続くようにカルシファーもついてきた。部屋の中にはいり、外にいる従者に助けを求めに走る。嫌いだけれど、死ぬかもしれない状況で意地なんて張っている暇はない。
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作者名：天音 | 作成日時：2024年2月13日 1時
