金曜日、貴女を。【skt】 (ページ1)

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1.花の名前。ページ1

最愛の人が亡くなって、約三年の月日が経とうとしていた。彼女の月命日には必ず、彼女のお墓にきて、彼女に会いにくる。これはただの自己満だけど、もうそれでいい。俺はもう何もいらない。彼女が戻ってくれたら、もう死んでもいい。だから、彼女に、Aに会いたい。

「天使みたいに、舞い降りてきてくれればいいのに」

彼女の苗字が書かれた墓石を数秒眺め、俺は立ち上がった。後ろを振り向くと、女性が少し遠くで歩いているのが目に入る。少し長い茶髪と、今にも消えてしまいそうな白い肌。服の袖から見える、ほっそりとした腕。

「A……」

自分でも無意識だった。走り出して、俺は彼女の今にも折れそうな手を握った。

「あ、あの！」

「…………」

その女性はこちらを振り向いた。あぁ、Aだ。俺の最愛の人だ。

「会いたかった……」

「あの、どちらさまですか？」

少し軽蔑の眼をしている彼女は、俺が掴んでいる腕の方に目線を落とした。俺も慌てて手を離す。

「人違いではないでしょうか？」

彼女はそう言った。日差しが暑いな。蝉が煩い。やばい、何も考えてなかった…困らせてるこの人のこと。

「俺、の好きだった人と、似てて……それで、」

やばい、思い出してまた泣きそうになってくる。

「え、あのちょっと泣かないで……！」