逆転マイノリティ。【usss】 (ページ3)

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「ちなみにさ、どの研究がいちばん楽？」

「……特に、なにも」

思い当たるものなんてひとつもない。結局全部痛いし、苦しいし、消えたくなる。どれがマシか聞かれればこうやって研究員と一対一で会話をして、異常者がどんな言葉遣い、息遣い、思い、行動、座り方、手の動き、まばたきの回数、どんな言葉に苛つくのか悲しくなるのか、苦しくなるのか悼むのか、そういう事を調べる研究が一番マシ。

よくドラマとかである、事情調査のような感じ。

反吐がでそう、気持ち悪い。

「注射器は痛いし、麻酔は怖いし、電気流されたり、殴られたりとか論外でしょ？」

「やっぱこれがいちばん楽だよなー」と背伸びをしながら彼は言った。

「俺だって楽だし、お前もなにも傷つかない。Win-Winじゃん」

「Win-Winとは思いませんけどね。」

「えーなんでー」

頬杖をつき、片手でボードを持ったまま、彼は身を軽く乗り出す。あぁ、やっぱ所詮研究なんだなって。

「こうやって話して、異常者のことについてまとめるけど、これはあなた達にしか利益はないですし、私には一切利益はない」

「逃げ出す方法を、匠に聞き出すこともできるのに？」

「そこまでして、私“が”逃げたいわけじゃないので」

そこで会話は途切れ、彼はボードに素早い手付きでメモをとったのだった。