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Aside

逞しい腕にしっかりした体つき
耳元から聞こえる早く脈打つ心臓の音
今まさに彼に、弟者くんに抱きしめられていると実感する



「俺だったら絶対にAを泣かせたり、傷つけたりしないのに」

「弟..者...くん」

「俺を好きになってよ...」

「...っ!」



掠れて震える声で、今にも消えそうなその言葉に私は息を飲んでしまう
ずっと私の事好きだったの?

そんな考えが頭をよぎり動けずにいた。私を抱きしめる力はとても優しくまるで壊れ物を抱く様だ。でも、心無しか震えている



「..いつから?」

「....」

「いつから私の事、好きなの?」

「Aに初めてあった時から...」

「!」



私と彼が初めて会ったのは私が18歳の時
上京して偶然にも弟者くんにあったことがある。その時はまだ近所の道なんて覚えてない時だったから迷子になってて、どうしようかと呆然としてる時に弟者くんにあったんだっけ

それからは確かお礼のために連絡先を交換して時々会ったりしたり、弟者くんの家に遊びに行ったり。その時に兄者さんやおついちさんに出会った



「6年もずっと私の事好きだったの?」

「うん。一目惚れだった」

「...」

「会いたくて会いたくてしょうがない日もあったよ。でも、Aは大学が忙しそうだったから我慢してた」



弟者くんの口から出てくる言葉がとても胸に刺さり涙がこぼれてくる
どのくらい私を好きだったのか。どのくらい苦しんでたのか。どのくらい愛してくれてたのか

私が泣いてるのに気がついたのかそっと体を離す。困ったように笑いながら涙を拭いてくれた



「あーあ、泣かせちゃったなぁ」

「ごめ..んね..」

「んーん。やっぱりAもおついちさんも好きだから幸せになって欲しい」

「弟..じゃ.くん...」

「最後にわがまま聞いてくれる?」

「?」

「少しだけ目を閉じてほしいな」



私はそっと目を閉じた
少しの間があっておでこに柔らかいものが当たった
ゆっくりと目を開けると今にも泣き出しそうな弟者くんの顔が



「あーダメだなー。失恋ってやっぱり痛いね」



彼はそう笑って言った。私の家まで送ってくれた後『またね』じゃなく『ばいばい』と言って帰っていった

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作者名:美月葵 | 作成日時:2018年5月2日 17時

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