人はそれを恋と呼ぶ【鶴丸国永】

16話 ページ17

私は正体不明なこの気持ちについて、鶯丸さんに相談をしていた


鶯「それで、素直になれないとはどういうことだ？」


「…具体的に言うと、素直に褒めたり、お礼を言う事が出来ないんです。いつも最後に余計な一言を言ってしまって…でも決して悪気は無いんです」


鶴丸さんと話していると、『少しづつでも君をきちんと知ろうと思う』と言ったあの時の表情を思い出してしまう


いつも飄々としている鶴丸さんも、こんな顔をするのだと思った


元々、切れ味が良いというだけで名刀でも何でもない私の事なんて、知ろうと思う物好きはいなかった


だが鶴丸さんは、そんな私を"知りたい"と言った


…その時からだろうか、こんな気持ちになったのは


鶯「…A？どうしたんだ」


急に下を向き無言になった私を見て、鶯丸さんが心配そうに覗き込んだ


「…あぁ、申し訳ありません。昔の事を思い出してしまって」


…そうだ、あれは過去の事、別に名刀でなくとも活躍は出来るのだし気にする必要はない


鶯「…それで、さっきお前が言っていた事なんだが、それ以外には何か思い当たる節はないのか？」


「素直に褒める事が出来ないということ以外なら…なんだか気にかかるというか…」


「すみません、自分でもなんて言ったらいいのか…とにかく、こう…モヤモヤするんです」


そう頑張って身振り手振りで伝えたが、なんとも語彙力のない…


…自分で言って恥ずかしくなってきた


するとそんな私を見て鶯丸さんは「ふっ」と笑った


鶯「そこまで気づいているなら、後はもう自分で分かるんじゃないか？お前もそういうものが何なのか、全く知らない訳では無いだろう」


「そういうもの…ですか？私が人について知っていることといえば…病気などでしょうか」


鶯「え…あ、あぁ。まぁそれもあるな」


真面目に答えたつもりだったが、鶯丸さんは面食らった様な顔をした


鶯「確かに、病気というのもあながち間違ってはいないだろう」


「え！？私は病気なのですか！？ならば直ぐに完治しないと…！」


病気というものは最悪、命を落とすと聞いた事がある


私は主様の為にも、まだ死ぬ訳にはいかない


鶯「落ち着け、それは比喩表現でそう呼ばれることもあるというだけだ」


ひ、比喩…？


「では、これは病気ではないのですね！良かった…」


そう聞いてほっと胸を撫で下ろすと、鶯丸さんは私に聞こえないくらいの小さな声でぽつりと呟いた


鶯「はぁ…鶴丸も苦労しそうだな…」

17話→←15話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す