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「っあーーーー! 142、143、」
ぶるぶると震える腕に血管が浮かぶ。
ぽたり、と汗が落ちた。
もうすぐ、もう少し。
「146、147、148、149、」
あと一回だよってところで腕を伸ばして、照は私を見下ろした。
「薄々分かってるかもしれんねぇけどさ」
「……うん」
「俺はお前に遠慮してほしくねぇんだよ。せっかく付き合えたのに、手を繋ぐのですら遠慮して」
遠慮してしまうのは、過去の経験のせい。
照の隣に私が居ても男同志がいるようにしか見えないって言われ続けたからで、こんな優しくて素敵な人と私は釣り合わない。
ずっとそう思ってこの気持ちを我慢してきた。
「俺はお前のなに?」
大丈夫だよって、まっすぐな視線が優しく私を包んでくれるかのような安心感がした。
「照は、私の……」
もう見えない誰かに遠慮することなく、堂々と照に伝えてもいいんだ。
「大好きな人」
そう言えば照は目をこれでもかってくらい細めてデレデレに微笑んでくれて、ゆっくりと腕を折り曲げてまた戻した。
「150。なあ、キスしていい?」
唇を一度噛んで、伏せていた視線を照へと向ける。
もう隠さない。
もう隠せない。
「うん、」
と頷いた瞬間、照の唇は私の唇に触れた。
チュッと、たった一度軽い軽いキスをした。
「俺たちの初めてのキスだな」
「……うん」
恥ずかしくて瞼を閉じたら、またチュッと二度目のキスが落ちてきて。
「やっば、俺ちょー幸せ」
私のおでこに手を乗せて、その上から自分のおでこを乗せる照。
「照、ありがとう」
照のおかげで私、大嫌いだった自分を好きになれそうだ。
私を好きだって言って、大きな手で包み込んでくれる照が私も大好きだから変わろうと思う。
「好きだよ。A」
「私も……照が好き、だよ」
「あー、ほんと幸せすぎて死にそう」
「やだ、死なないで」
「死なねぇーよ。ね、もっかい言って?」
「………好き、照」
くしゃりと笑みを崩して私に抱きつく大きな身体を受け止めて抱き締めた。
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ゆきんこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます!この作品の前作がシリーズもので、お話を繋げて物語を作る様なことをしていたので、そこを楽しんでもらえたら嬉しいです(^^)ありがとうございます!楽しんでもらえる作品が書けるように頑張ります! (2021年5月26日 13時) (レス) id: 21f13df572 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - はじめまして。お話すごく面白くてキュンキュンしました。他の話も読みましたが、話が繋がっていて"あー!"ってなりました(笑)一気読みしてしまいました。これからも素敵な作品楽しみにしています! (2021年5月26日 11時) (レス) id: 197c8cdcc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2021年5月16日 16時