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白い吐息が宙に舞った。
もうすっかり冬だ。道行く人々が厚い服に身を包んでいるのをぼんやり眺める。もう今年が終わってしまうのだと思うと、なんだかとても寂しかった。
乱「さむ…嗚呼…」
言いながら乱歩さんが最後の団子を口に放り込んだ。
「こんなに寒いのに団子屋なんて行くのは馬鹿のやることだよ!」と喚いていたのに美味しそうに団子をもぐもぐしている。可愛い。
団子に刺されていた串を皿に投げ入れ、乱歩さんがふと言った。
乱「もうすぐ、クリスマスだね」
貴「あぁ…そういえば、そうですね」
クリスマス。
探偵社の皆で集まって過ごすことになりそうだが、どう転んでも乱歩さんに贈り物という名の貢物を捧げる事になるだろう。下手なものは送れない。今から何か考えておかねば。
乱「クリスマスと言えば、『賢者の贈り物』って言うお話があるじゃない」
私の思考を見透かしてか、乱歩さんが言った。
『賢者の贈り物』というと、オー・ヘンリーのあれだろうか。子どもの時に読んだ記憶がある。
貴「ありますね。子どもの頃は何が言いたいのか分かりませんでしたよ。『お互いにすれ違いで大事なものを失ったのに』って」
乱「そうだね。彼らは大事なものを失った。それが結果として愛の証明になったとしても、現実的に彼らの行動は愚かだと言える」
乱歩さんがこんな話をするのは珍しい。
冬の空気に絆されたのか、はたまた何か思うところでもあるのか。
貴「今思うと…なんていうか、お互いの事をよく知っていなければあんな結果にはならなかったけれど、お互いの事をよく知っていたからあの結末になったんですよね」
乱「うん」
乱歩さんは濁った空を見上げた。
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麗(プロフ) - 5ページ 太宰さんに乱歩さんに 乱歩さんを ではないでしょうか? (2021年3月28日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 3ページ 丈が眺めの 眺め ではないと思います、、 (2021年3月28日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
飛花落葉(プロフ) - みずさん» 嬉しいです!ありがとうございます! (2018年8月13日 19時) (レス) id: 3b14457373 (このIDを非表示/違反報告)
みず(プロフ) - 乱歩さんに萌えました。あなたとあなたの作品が好きです心から。 (2018年8月9日 6時) (レス) id: 40c42479fe (このIDを非表示/違反報告)
飛花落葉(プロフ) - 通りすがりの変人さん» 嬉しいです!頑張ります!読んで頂きありがとうございます〜! (2018年5月27日 5時) (レス) id: a4f8881ef2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛花落葉 | 作成日時:2018年3月21日 15時