あったかい ページ30
「さあ、座れ」
クラスメイトがみんな帰った後、先生は教壇の前で教鞭を軽く自らの手に当てた。
震えながら椅子に座る。
そんなあたしの様子を見て、クルーウェル先生は長く細いため息をついて、杖を振った。
先生がたまに使う、服従の魔法。
「いいか、俺に聞かれたら本当のことを話せ。」
その手が、あたしに伸びる。
＿＿＿＿殴られる！
目をきつくつむったが、頭に伝わってきたのは衝撃ではなく温かさだった。
……え？
先生は、乱暴ながら優しさのこもった手付きであたしの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「仔犬。お前、最初に比べて随分と痩せたな。餌は食ってるのか？」
「食べて、ません……食べられないんです」
「やはりな。栄養剤だけだと身体に悪い。話が終わったら来い。飲みやすいスープを飲ませてやる」
その手の温かさが、あたしの冷え切った身体を包み込んでいく。
前もこんな事があった。でも、あの時の偽りの温かさより、ずっと安心させてくれる。
「それで、監督生の件だが。どうしてあんなことをしたんだ？理由があるんだろ」
言っちゃ駄目だ。契約違反をしたなんて知られたら、どんな恐ろしい目にあわされるだろう。
そう思ったけれど、ただでさえあたしは魔法耐性が弱い。服従魔法に抗えない。
「実は、アーシェングロット寮長と契約していて……っ」
あたしは涙ながらにこれまでの事を告白した。
「あたしっ、ユウのこと虐めてないのに……っ、でも今は、それがほんとになっちゃってっ……ぐすっ」
ひと通り話し終わって、先生が口を開いた。
「駄犬め。辛かったのなら早く飼い主の俺に相談しろ。ひとりで抱え込もうとするな。それとなぁ、なんでそんな契約をしたんだ。他人思いなのはいいが、自分の事も考えろ」
怒っているような言葉だったけど、その口調は優しかった。
「俺のクラスの駄犬どもには前々からデマを真に受けるのはやめろと言ったんだがな。まったく、単純な奴らだ。でも＿＿」
クルーウェル先生は、ニヤリと笑って扉の方を見やった。
「今の話を聞いてもそう思うか？」
先生が、魔法で扉を開くと、そこには気まずそうな顔のクラスメイト達がいた。
その中にはグリム、エースとデュースも。
「あんたたち、なんで」
「……お前がこっぴどく叱られると思って、聞いてたんだ」
みんながあたしと目を合わせようとしないなか、デュースがあたしに駆け寄った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アイカ(プロフ) - ぐああああ、最後の最後でっ！！心臓だけじゃなく、臓器も持っていきやがったな‥このジェイド・イケメン・リーチがッ！ (2023年2月19日 18時) (
レス) @page41 id: ac6b3b28c7 (このIDを非表示/違反報告)
＼(^o^)／ - 待った待った待った待ったぁ？！夢主いい子すぎやろ！！(´；ω；｀)（泣） ハッピーエンドで良かったです！あとジェイドと夢主はお幸せになぁ!!!! (2022年3月29日 15時) (レス) @page41 id: 111ab3751f (このIDを非表示/違反報告)
・(プロフ) - *瑠璃*さん» えへへめちゃんこ嬉しいです！泣かないでください私が人様を泣かせるなど恐れ多い……読んで頂きありがとうございます！ (2020年12月11日 21時) (レス) id: 81aa5af38e (このIDを非表示/違反報告)
*瑠璃* - 待ってホントに泣いちゃうって(((((更新頑張ってください！応援してます！！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: f48c22676e (このIDを非表示/違反報告)
・(プロフ) - まるるさん» 今でさえ、証拠もないのに夢主の陰口を言う奴がいますからね…。アズール先輩が何を言っても聞くかどうか…。果たして夢主がどうなるか、お楽しみください！コメント本当に嬉しいです、ありがとうございます！ (2020年11月21日 17時) (レス) id: 81aa5af38e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2020年9月13日 17時
