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伊沢side



「あ、その推理小説すごく心惹かれるものがありますよね!」

小説を読んでいたら、突然話しかけられたから少し驚いた。
そして、この作品を知っていることにも驚いた。
俺が好きな作家さんの作品だが、正直に言ってマイナー作品だと思う。

こうちゃんが小説とかを読んでいる姿を見たことがなかったから、本をあまり読まない人なのかと思っていたけど、違ったのか?

「お!よく知ってるね!」

「つい最近、友達に勧められて読んだんですよ!その子かなりの文学少女で、有名作品は勿論なんですけど、マイナー作品までよく知っていて、勧められる本はどれも面白いんです!」

「へぇ〜、すごいな!それは是非一度話をしてみたい」

文学少女か……。
QuizKnockのライターの中で本をよく読んでるイメージがあるのは、川上とか水上くらいだから、欲しい人材である。
しかも女性ライターは極端に少ないから、尚更欲しい人材だ。

「こうちゃん、その子に会わせてもらうことって可能かな?」

こうちゃんは、キョトンとした顔をしてから、何かを思案するように首を傾げた。

「うーん……、会うのは可能だと思いますけど、もしライターとして誘うんだったら諦めたほうがいいと思いますよ?」

「なんで?」

「何て言えばいいか分からないんですけど、彼女は何事にも執着しないタイプだと思うので、断られると思います」

何事にも執着しない、ね。
尚更気になるな。

「まぁ、誘ってみないことには何も始まらないからさ!」

と言うと、なぜか笑われた。

「伊沢さんなら、そう言うと思いましたよ。分かりました。ちょっと電話してきますね」

携帯を片手に、部屋を出ていった。

……ヤバい。楽しみだ。
ライターになってくれるかどうか、不安ではある。
だけど何より、俺の好きな作家さんの作品を知っている人が周りには居なかったから、語れる相手になれれば嬉しいなと思う。


まだ名前も知らないその人に会うのが、なぜか無性に楽しみだった。

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作者名:陽だまり | 作成日時:2019年2月2日 22時

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