12話 記憶 ページ14
「桜橋先生!!」
緑谷の叫びにオールマイトとセメントスはその方向に目を向けた。気付いたセメントスが莉華に駆け寄り、声をかけるが反応がない。完全に気を失っているようだ。
「りっ…っ!」
オールマイトの言葉が途端に詰まる。壊れた左の義手と、地面に広がる血痕に目が止まった。乾ききってない血が義手の破損部分を汚していた。
ザザッ…
壊れたテレビのように、頭の中で【あの日】の記憶が再生される。
ヒュッと喉が鳴るのを感じた。ドクドクと、早鐘を打つかのように心臓が激しく動く。情けないことに腕が震えていた。疲労からくるものではなく、恐怖からくるものだった。
止血のため、セメントスが手近な布で莉華の右腕を覆う。
「オールマイト…？」
緑谷がオールマイトの方を向くと、青ざめた顔で強ばった表情になっているのが見えた。それも一瞬で、駆けつけた教師たちの足だけしか見えなくなり、すぐに浮遊感がきた。緑谷たちは教師たちに支えられながらその場を後にした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
白い天井。
薬品の匂い。
―なん…だっけ……私…どうしたんだっけ…
靄がかかったかのように頭がぼぅっとする中、視線だけを動かす。
―あ…黄色
視界の先にフワフワとした黄色いものが映った。それはどうやら髪の毛のようで、次に青い瞳がこちらをじっと見ているのが分かった。不安そうに揺れており、泣き出しそうな表情をしていた。
―…子供……？誰かに…似てる
生徒の誰かだろうかとか思いながら、その子の頬に触れた。だが、触れた感触は柔らかなものではなく、硬いものだった。ドクドクと、何かが脈を打っているかのような振動が手に伝わる。
「起きたかい？」
徐々に覚醒していく意識の中、上から降ってきた声に目を向ければ、そこには安堵したような表情をした人物が、ベッド脇に座っていた。
『…俊典』
「気分はどうだい？」
莉華の右手はオールマイトの左胸にあり、手に感じた振動は心臓によるものだった。包帯で何重にも覆われた右手をオールマイトの手が優しく握る。
『ん 意外と平気…』
オールマイトに支えられながら体を起こし、窓の外を見ると、オレンジ色の光に包まれていた。
『かなり寝てたんだね』
「出血が酷かったからね」
『でも流石はリカバリーガールだよ もう殆ど治ってる』
((ﾎﾟｽｯ
莉華の肩にオールマイトは額を乗せた。
『俊典？』
伝わる体温に目を細める。【あの日】の情景と重なり、莉華の手を無意識に強く握っていた。
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伊瀬(プロフ) - てくさん» 作品へのご指摘ありがとうございます。確認して、オリジナルフラグを外したと思うのですが、ちゃんと外れていますでしょうか？自分で確認するにはどうしたらいいでしょうか？質問ばかりですみません。 (2017年7月31日 8時) (
レス) id: 73a80f0bce (このIDを非表示/違反報告)
てく - 違反になりますので、オリジナルフラグを外していただけませんか？ 作品作成のルール・注意点・ガイドラインにも載っていますのでおめ通しください (2017年7月16日 19時) (レス) id: 42191458d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊瀬 | 作成日時：2017年7月16日 9時
