雨 ページ26
それからというもの、遅れることはなくなってきたがAの不調は治らなかった。
何かあったのかと聞いてみても、
やっぱり返ってくるのは「大丈夫」のひとこと。
帰りもすぐにどこかへと行っちゃうし、
ご飯などに誘っても全部断られちゃうし。
そうしているうちに、あっという間に俺らとAの間にはなにか大きな溝が出来ていた。
段々と置かれるようになった距離にどうしていいのかも分からないまま、公演一周間前を迎えた。
「またAはまだ来てない?」
「まだ」
「さくちゃん、一緒に登下校してねぇの?」
「うん。なんか、最近朝は委員会の仕事とかで朝早く行ってて、帰りは見当たらないんだよねぇ」
なんでだろ、と落ち込んでいる作間を励ましつつ頭で考える。
けど、いつも笑ってるしなぁ。
具合が悪いとかでは無さそう。それから俺らが知らぬ間に何かをしでかしていた線も。
…考えたくはないが、…本番直前にして気が緩んでいる、としか……
「…遅れましたッ」
そんな息の上がった声と共に入ってきたAは、
「えっ」
誰が見てもびっくりするくらい、びしょ濡れだった。
「どうしたの…?!」
「あはは、傘忘れちゃって」
ごめん、今準備する!
と荷物を置き準備しに急いで部屋を出ていった。
…けれど、この時点で違和感は最高潮に膨らんでいた。
「…今日ってさ、朝から雨、降ってたよね?」
「なのに忘れた?」
「朝から雨凄かったから流石に忘れたのはないんじゃない?」
「帰りに折れたとか?」
そう軽く口にしてみるけど、
何故か、こう簡単に終わらせてはいけないと思った。
「…とりあえず、バッグ拭いといてあげるか」
棚の上にあるバッグはまだ拭けていなかったのか、びしょびしょだった。
それをタオルで拭こうと手に取った時、
「?!おもっ?!」
予想以上に重くて、つい落としてしまった。
「あーあ、こりゃ怒られるぞ」
「中身まで散らかしちゃってー」
「やべっ!」
ボタンで簡単に止めてあるだけのバッグだったから、落とした反動に中のものがすこし散らかってしまった。
「(…?なんで、こんな持ち帰ってきてんだ?)」
床には絶対に持ち帰ってこなくていいであろう教科書などが。
…昔、全部置き勉してるとか言ってたような。
それらを急いで手に取ろうとすると、
「…あれ、これ、折りたたみ傘……?」
Aが忘れたと言っていた、折りたたみ傘があった。
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美紀 - 瑞稀君と優斗君寄りのオール担当です最高です (2019年8月24日 20時) (レス) id: a31ea93868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透夏 | 作成日時:2019年3月15日 2時