Flower 12【HiB】4

158 ページ8

SideA


被害者が庇ったのも実の息子だったから。

母親を殺した息子という汚名を着せたくなかったから。

だから、警察も、救急車も呼ばなかった。


那須「母親の愛だよね……」


A「愛……ね」


優斗「A？なんか言った？」


A「ううん。なんにも」


その後、木村さん宅へと行って

明夫さんにも事情を話して

勇気くんを事情聴取のため

私たちの事務所まで連れて帰った。


そこで勇気くんは、自分が刺してしまったことを話してくれた。









あの日は、いつものようにこっそり

お母さんに会いに行ったらしい。


防犯カメラに映らなかったのはたまたま。


その日は、仕事で疲れた様子だった

お母さんのために勇気くんがご飯を作っていたらしい。

包丁で野菜を切ってる時に包丁を持ったまま

振り返ってお母さんに話しかけた。


その瞬間、その包丁はお母さんに刺さった。


お母さんが勇気くんに

「誰にも何も喋らずにこのことを忘れなさい。

いい？絶対に喋っちゃだめよ」

そう言って勇気くんはお母さんのアパートをあとにした。









瑞稀「結局、これは不幸な事故だったんだね……」


涼「もし、お母さんが警察を呼んだりしてたら

未来は変わったのかもしれないね……」


幼い少年の不幸で切ない殺人。

お母さんのためにご飯を作っていなければ。

包丁を持ったまま、振り返らなければ。

お母さんに会いに行かなければ。


どれか1つでも回避できていれば、

こんな結果は迎えなかったのかな。

159【電話詐欺】[6月26日]→←157

ラッキーソング(Aぇ! groupオリジナル曲)

Firebird

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す