優麗 ４ ページ36
と、こっそりAに聞こえないよう耳打ちしてきた。なるほど、と言ったら怒られそうだけど。俺は首を、縦に振ったのだった。
数日後、桜ノ宮家での生活が始まり。「好きに使ってね」、と言い渡された部屋には、机やエアコン、さらにはベッドの設備が整えられていた。
ナイフとフォークの使い方から、着物の着付けまで。家に置いてくれて、学校まで通わせてくれるから。必死に覚え、不器用なりに執事の仕事を着々とこなして行った。
年に一度行われる、お嬢様のパーティー。あれは、小学六年生のときだった。
「あ、Aちゃん久しぶり」
「久しぶり！元気にしてた？」
同性から親しまれる性格だったAは、会場につくなりあっという間に俺のそばを離れ。一人になった俺は、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいた。
……こうして見ると、本当、世界が違うって言うか。Aって、可愛いんだなぁ……。視線の先には、いつもAがいた。守らなきゃ、って言う使命感もあったけど。
ただ単に、可愛い、ずっと見ていたいって。このときすでに、俺はAに惚れていたのかもしれない。
「両親もいないのに、なーんで執事になれたんだか」
ふと聞こえたのは──胸を突くような言葉。チラッと横目で見ると、明らかに俺を見て二人組が話していた。反応するな。グラスを持っていた指先に、力が入る。
「執事の質も落ちたよな、一般人以下の人間でもなれるんだからさ」
ヤベェ、手出そう。移動しようとしたその時。二人組の前に立ちはだかったのは、ピンクミニドレスに身を包んだAだった。
「そうねー、確かに質落ちたわよ。『アンタら』のせいで。
少なくともウチの優斗は、アンタよりずっとずっと上の執事よ。次何か言ったら、アンタたちの会社ぶっ潰してやるから。覚悟しなさい」
お嬢様らしからぬワードがズラズラと並ぶ。呆気に取られて、見ているだけの俺。二人組は、眉間にシワを寄せ立ち去って行ってしまった。
「ちょっと！アンタも何黙ってるのよ！」
「……だって、喧嘩になるし」
「はぁ？しちゃえば良いじゃない。
優斗があんなのに負けるわけないんだしさ」
顎で二人組の背中を指すA。その様子がおかしくて。ぶは、と吹き出した。
「……ありがと」
いつも、守られてばかりだった。一番辛いとき、隣にいてくれたのは。いつだってAだった。
俺が守らなきゃ。本格的にそう思ったのは、この日からだった。
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ミント(プロフ) - どのお話もとても素敵で、短編なのに引き込まれる世界観が大好きでした！おつかれさまでした！ (2019年1月14日 15時) (
レス) id: e20fb3d910 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - 私の大好きなマジョマリがまた読めるなんて感激です（ ｉ _ ｉ ）楽しみです！頑張ってください！ (2019年1月1日 2時) (レス) id: f9588c4e4d (このIDを非表示/違反報告)
真優(プロフ) - ゆうぴのお話で、ゆうぴが一個上の先輩で、主人公が後輩の関係で直接会うとあまり話せないけどラインとかだと話せるみたいな仲でクリスマスに後輩が告白する的なものが読みたいです！ (2018年12月24日 2時) (レス) id: f8f4960291 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - お忙しい中お返事ありがとうございます(TT)！わぁ、そうだったんですね…！どれも素敵なお話だったので残念で寂しいですが、お返事頂けて嬉しかったです！これからも楽しみに読ませて頂きます☆ (2018年11月22日 22時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
れなさん(プロフ) - りんさん» りんさんはじめまして！いつもありがとうございます(*^^*)実はDeuxの方削除してしまいました……。もし好きな作品だったら本当に申し訳ないです(；_；) (2018年11月21日 19時) (レス) id: c72a49e4f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れなさん
| 作者ホームページ：れなちゃん(@pinky_lovers98)さんをチェックしよう https://twitter.com/pinky_t17?s=...
作成日時：2018年5月25日 17時
