愛の行方 【JW赤×緑】

□ 38 ページ38

橙「神ちゃんはもっとしげを信じていいよ」
「信じる？」
橙「うん。
今神ちゃんの中で裏切られることに酷く怯えてるやん。
その気持ちはすごい分かる。されたことは無いけど浮気されて空へ行ってしまう人間がいるほど残酷な物って知ってる」
「ぁ…」


確か照史の代にそんな人が居た。

学生の頃で若かったこともあるんだろうが彼氏に浮気された女子生徒が自ら身を投げてしまったのだと。


それは照史と幼稚園から一緒の幼なじみだって事も知っていた。


橙「でもさ、」
橙「しげは全部知ったうえでもんちに向き合って告白してきてくれたんやろ？」
「…」
橙「信じられないならそれでもええよ。今はゆっくり休んでええの。
けど、それは他の人だったらの場合。」

橙「神ちゃん」

橙「しげが裏切ったり、目移りしたりする薄情で女々しい奴だと思う？」
「思わへん、」
橙「あいつが一途じゃない訳ないのよ」
「ん、」
橙「信じてやってほしい。しげのこと。」

橙「いままで20数年間、神ちゃんしか見てこなかったあいつが良い奴ってことは神ちゃんが1番、分かってるんやない？」


へらっと笑って見せた照史。


分かってる。分かってるんだ！

しげが1番信用できる事。

もしかしたら家族より一緒に過ごした時間が長いしげだから。


裏切るわけが無いんだと。


俺を傷つけるようなこと、する訳なんか無いって分かってる。


すぐにでもその手を握りたかったのに。
元彼の存在が邪魔をしてその手を握る勇気が出ない。

しげを信じていい理由を求めてしまっていた。


橙「俺らはさ、神ちゃんたちにしあわせになって欲しいって思ってるよ」
橙「学生の頃から見守ってきた2人やで？幸せになって欲しいに決まってるやん」
橙「それにまだ俺らは若いんやからこれからもっといっぱい色んな人に出会う。自分が想定している何倍も多くの人と縁を持つ」

だから

橙「1回くらい、勢いに身を任せちゃってもええんやない？

適当に理由付けて運命だって騒いで、勘違いしたまんま一生好き同士だったら幸せだねって。決めつけちゃえばええねん。」
「ぁ、きと……」
橙「それにしげがなんかアホなことしたらみんなでぶっ飛ばしたるわ！」
「んふふ、程々にしたってや？」


「無理や絶対許せん」と意気込んでいる照史に笑ってしまう
ありがとうと席を立つ。グラスはもう底を尽きた。

照史に柔らかく見送られながらろくに会話も締まらんまま抑えきれず店を出た。

▷ 39→←□ 37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す