ボールに込めて。【柳田将洋】

ball 4 ページ4

会場につくと、たくさんの人がいて、自分の論文を探すのに時間がかかった。

自分の論文を見つけて、そっと手に取る。

『すごい…』

金色のシールを貼られている。

これが賞の証か…と思うと嬉しくて思わず微笑んだ。

すると、さっと隣に入り込む人がいた。

驚いて見上げると

『柳田くん…』

さっき電車で話題になったばかりの柳田くんがいた。

柳田「どうも」

また無愛想にぺこっとお辞儀をして自分の作品に目を通す。

電車の事が気になって思わず声をかけてみた。

『さっき、電車で柳田くんのこと、マサさんってよぶ高校生に会ったんです。確かバレーが上手な高校生だと思うんですけど』

私が言うと、柳田くんはしばらく考えはっと顔を上げて苦笑いをした。

柳田「祐希…あいつ…。すいませんなんか」

柳田くんの言い方からして仲が良いのかなと思い、にこりと笑い返しておいた。

すると、柳田くんはすぐにさっと自分の論文に目を戻してうつむいた。


初めてちゃんと話したのにやっぱりそっけないな。

そう思って、私は自分の論文を元に戻してほかのところへ回ろうとした。

ball 5→←ball 3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す