舞台袖から-3 ② (ページ10)

今日:60 hit、昨日:45 hit、合計:11,651 hit

3-04 ページ10

1412と書かれたドアの前に立ってみる。その部屋に表札はなかった。

念のためインターホンを鳴らすが応答はなし。

ごくりと喉を鳴らしてから、緊張しながら鍵を差し込んで回す。私の心持とは反対に、鍵は簡単に回ってカチャッと軽い開錠音がなった。

ドアの取ってを握って、早鐘を打つ心臓を何とか抑えようと、大きく息を吸って吐く。それから、意を決して取っ手を引いた。

ドアは私の力に抗うことなく、簡単に開いた。

そっと中を覗き込んでみる。玄関に靴は1足もなく、誰かが住んでいるという訳ではなさそうだ。

「お、おじゃましま〜す……」

恐る恐る中に足を踏み入れ、後ろ手でそっと玄関ドアを閉じる。一応声をかけてはみたが、インターホン同様応答はなし。

玄関をそっと見渡してみる。靴どころか、ものが何ひとつ無い。埃は積もっておらず、誰かが定期的に掃除しているらしい。

父さんが来ているわけではないだろうから、母さんが帰ってきた時にしているのか、それとも私と全く関係のない第三者か。

靴を脱いで玄関にあがる。

とりあえず玄関に一番近い部屋のドアを開けてみたが、そこには玄関同様、ものが何もないただの空間が広がっていただけだった。

いったい1412号室には何があるというのだろうか。

何もなかった部屋のドアを閉じて、玄関に戻る。

どうやら間取りは私の家と大差ないらしい。

何かあるとしたら1番広い部屋かと考えて、私の家ではリビングにつながるドアを開てみる。ドアを開けて私は息を飲んだ。

ドアを開けた先の空間は、確かに私の家のリビングと同じ間取りだが、内装は全く異なるものだった。

カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中央には大きな机と椅子が1つずつ置かれていて、机の上には椅子を中心に半円形に置かれた沢山のモニター。モニターの前には当たり前だが、キーボードが置かれている。

「パソコン、だよね？」

返事がないことはわかっているが、何となく声に出してみる。

それから、誘われるように私はそれに近づいて行った。

近づいてみて気付く、キーボードとモニターには薄く埃が乗っていた。

部屋は掃除されているが、キーボードやモニターまではされていないようだ。どうやらこの部屋を掃除している人は、部屋の掃除をするだけでこれらを使ってはいないらしい。