舞台袖から-3 ② (ページ9)

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言っていた通り、母さんが家に帰ってくるのは本当に時々だった。

それまで母さんがかたくなに私にやらせなかった父さんの部屋の掃除も私がするようになった。

母さんが放浪旅を初めて数カ月がたったころ、私はいつも通り父さんの部屋を掃除していた。

いつもと違ったのは、落ちていたペンを戻そうと父さんの机の引き出しを開けたことだけだった。

母さんは帰ってくるたびに父さんの部屋で何かしていたので、その時に落としたのだろうと、私は特に深く考えることもなく引き出しを開けた。

入っているものに人生を一変させられることになるとは露ほども思わずに。

引き出しの中に入っていたのは、内側が見えないように二つ折りになったメモ用紙と鍵。私はメモに誘われるように、それを手に取って開いた。

「私宛……？」

メモの一番上には私の名前が書かれていた。しかし、そのメモに書かれていたのは言葉でも無ければ、日本語でもなかった。

そこに書かれていたのはは1412という数字と、規則性のない数字とアルファベットの羅列だけ。鍵は家の鍵と同じものだった。

鍵がメモと一緒に置かれており、さらにメモには数字。ということは、おそらくこの鍵は1412号室のものなのだろう。

鍵はすぐにわかったが、不可解な数字とアルファベットの羅列はわからなかった。となると怪しいのは1412号室。

これは絶対に何かあると思った私は、掃除の途中だったことなんてすっかり忘れて、鍵とメモを持って1412号室へと足を進めていた。