舞台袖から-3 ② (ページ6)

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出してもらった2杯目の珈琲が入ったカップを、ソーサーの上に置く。

カチャ、と小さく音が鳴った。

ふう、と一息ついて私は数年前の記憶を呼び起こす。

というのも、どうせならこの際全部話してしまおうという流れになり、黒羽くんに私がパンドラを探す理由、ひいてはキッドに協力する理由を尋ねられたからだ。

意識を昔の記憶の中に飛ばす。

あれは3年前の春の話だ。酷く雨が降っていたのを覚えている。

「消息、不明……」

バケツをひっくり返したみたいな雨のせいで、周りの音がよく聞こえない中、私がオウム返しに出したその音だけは、骨を伝って私の中に嫌に響いた。

時々家に遊びに来ていた父さんの同僚であり友人の彼が、悔しそうに言った言葉は、私をぐちゃぐちゃに掻き回した。

私の父さんA秀之は、アメリカ中央情報局、CIAの諜報員だった。

CIA1の天才ハッカーだと、父さんの友人がいつも私に自慢していた。そんなこと私が1番知ってるのに、父さんの友人はいつも誇らしげに言うのだ。

「Aちゃんのお父さんは、俺の自慢の友人だよ」

その父さんは、数年前から大きな仕事をしていると聞いていた。

ところが、つい先日、いきなり消息を絶ったらしい。

父さんの友人は、母さんと何やら色々話していたが、何を話していたのかは分からない。

私もその会話を聞いていたはずだが、全く何も耳に入ってこなかったのだ。