舞台袖から-3 ② (ページ41)

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そのまま廊下を進んでホテルを出る。ホテルの前の道はディナーショーを見ていた客でいっぱいだった。

人混みの中を縫うようにしながら2人で歩く。オレもAも何も言わないが、この沈黙は嫌なものでは無かった。

「あー、快斗！！」

しかし、その沈黙は一瞬にして破られることになる。聞き覚えありまくりのその声に、思わずゲッ、と声が出る。

首だけで振りかえると、人混みの中に青子がいた。青子がAに気付いている様子は無く、そのまま俺の方に向かって近づいてきた。

「じゃ、私はこれで……」

それだけ言って近付いてくる青子から逃げるように、Aはそそくさと人混みに紛れて言った。

逃げやがった。

そう思ったものの、青子の誘いを断ったはずのオレがAといるのもおかしいかと思い直す。

「なーんだ、やっぱ気になって見に来てたんだ！！」

からかうような、でもどこか楽しそうな声で青子は後ろから話しかけてきた。

「ケッ、あんぐれーならオレにだってできるよ！」

なんなら、今日マジックをしたマジシャンの中の1人がオレだし……。そんなこと青子に言えるわけもないが。

「じゃーやってみなさい！今ここで！！」

青子が少し苛立った声をあげた。

バーロ、誰がやるか！！

心の中で言い返し、やいやいとうるさい青子を無視して歩き始める。

「ちょっと快斗ー……」

青子が後ろからオレを追いかけてくる。ここでマジックをすることぐらい簡単だ。でも、しない。だって、

赤い涙の後じゃ何やったってかすんじまうからな……。