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「な、なんだよ……」
「や、ごめん、キッドはあんなにキザなのに、中身は黒羽くんだと思うとなんか面白くて」
なんとか笑うのを抑えながら、理由を説明する。そんな私に、黒羽くんは呆れたような目を向けた。
「面白いって、オレは気づいた時頭抱えたぞ？ まさか無線の盗聴やらハッキングやらをやってのけるのが同級生……。女子高生にハッキングされる日本の警察、大丈夫なのか？」
「それを言うなら、男子高校生に宝石盗まれまくる警察はどうなの？」
軽口を叩き合うと、自然と視線が交わる。そして、2人で顔を合わせて吹き出した。
今世間を騒がせている世紀の大怪盗はただのマジック好きの男子高校生で、それを手伝っているのがその男子高校生の同級生。
普段キッドのことを囃し立てるメディアやファン、そして血眼になってキッドを追う警察、その誰もが気付いていないだろうその事実が面白い。
世の女の子達がミステリアスだイケおじだと言って熱を上げているキッドの正体は、マジック好きの男子高校生で、しかも同級生。
これが笑わずにいられるだろうか。
「あ〜、まあ、なんだ、これからもよろしくな？ A」
一足先に落ち着いた黒羽くんがそう言った。
いつまでも笑っていられないので、私も呼吸を落ち着けて彼に応える。
「うん、よろしく、黒羽くん」
それから、カウンターにいる寺井さんの方を向いて言う。
「今度からはこの姿でお邪魔しますね」
「珈琲を用意してお待ちしております」
寺井さんから返ってきたのは、キッド関係なく遊びに来ようかなと思ってしまうほど魅力的な言葉だった。
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作者名：もへじ | 作成日時：2023年7月3日 0時
