舞台袖から-3 ② (ページ40)

今日:32 hit、昨日:45 hit、合計:11,623 hit

ページページ40

Aが言うには、お客さんを逃がす時にプチパニックになり、その時にナイフが当たったか何かで切れたらしい。

とりあえず流れ弾が当たったとかでは無いらしいので、ほっとする。

女の子なんだし、銃創なんか出来たら困るだろう。とりあえずその可能性はなさそうなので一安心だ。

それにしても、ナイフで腕を切るなんてなかなか無いだろ。しかも、本人の言い草だといつの間にか切れてた様子だし……。

目を逸らして苦笑いするAに、やれやれと思いながらため息を吐くと、ビクッと彼女の肩が揺れた。

「ったく、気をつけろよな。跡にならねえようにちゃんと手当てしとけよ？」

オレがそういうと、Aはぱちぱちと数回瞬きをしたあと「ふはっ」と小さく吹き出し、眉を下げてへにゃっと笑った。

「ありがと、気をつける」

その表情に、なんだか拍子抜けした。

今の、青子だったら絶対何かしら言い返されてた。「元はと言えば快斗のせいでしょ〜」とかなんとか。

青子のように言い返してくるかと思っていたが、Aはへにゃっと笑うだけだった。

気の抜けたどこか間抜けな表情。キッドの協力者であるAに対して抱いていたイメージとは違う、年相応な女子高生らしさの感じる表情。

それは青子とは別の、初めて見る反応だった。

青子とは違う反応に、なんだか調子が狂う。オレは少し気恥ずかしくなって、Aから視線を逸らした。

「……おう」

ほんのり熱くなった顔をそのままに、ポケットに手を突っ込んで歩き始める。

後ろから同じペースの足音が着いてくるので、Aが後ろから着いてきているのだろう。

心做しか、後ろの足音は軽やかな気がした。