舞台袖から-3 ② (ページ33)

今日:73 hit、昨日:45 hit、合計:11,664 hit

ページページ33

血が腕を伝って床に落ちるのをそのままに、ウェイターに掴みかかるように叫ぶ。

すると、次の瞬間にはさっきまで静かだったレストランが一気に騒がしくなった。しかし銃を持った男が、なんてにわかには信じがたいらしく、誰も動く気配を見せない。

「お客さ……」
「ち、血が……！！」

困ったようなウェイターの声を遮るように、誰かが私の腕を見てそう叫んだ。するとそこからは速かった。

誰かが悲鳴をあげ、それに共鳴するようにさらに悲鳴があがる。

ガタガタと音がなり、食事中だった人達が次々に立ち上がり、椅子をひっくり返し、食器をひっくり返ししながら走り始めた。従業員の静止は聞き入れられることなく、客達は我先にと非常階段とは別の階段やエレベーターへと向かっていく。

私もそろそろ移動しようと立ち上がったところで、非常階段から音が聞こえた。ズキュンという、銃声が。

「まさか、もう……！？」

音は徐々に大きくなっていき、ついに非常階段のすぐ近くにいた私以外にも聞こえるようになったらしい。逃げ惑う人達の悲鳴や怒声がさらに大きくなり、制止していた従業員達も銃声を聞いて取り乱し始めた。

おしくらまんじゅうしながら、雪崩るように客たちが階段を降りて行く。

最後尾を追いかけていると、殆どの人が逃げた頃にキッドが非常階段から姿を見せた。

バチりと目が合ったので、頷いて任務完了を伝えておく。そして彼と、彼と共に逃げてきたジョディさんを残して、銃声を聴きながら私も先に逃げた人達を追うように階段を降りる。

しかし完全に降り切るのではなく、踊り場で止まって、手すりに隠れるようにして先に行った客と従業員を見送った。そのままタブレットを開き、黒羽くんからの連絡を待った。