舞台袖から-3 ② (ページ30)

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すっかり日が落ちて辺りは暗くなった。

見上げた空には月がぽっかりと浮かんでいて、辺りを優しく照らしている。

ゆったりと変化する景色を眺めながら、私は食後の珈琲を飲んでいた。

港ホテル最上階の展望レストラン、私は今そこにいる。回転装置を制御しているシステムのハッキングはとっくの昔に終わっており、暇を持て余していたのでレストランで食事をしていたのだ。

カップを傾けながら時計を確認する。ここに来てからしばらく時間が経過しており、5階のホールで行われているホッパー奇術団のディナーショーもそろそろ大詰めだろう。

タブレットの電源を入れる。タブレットの画面には、このホテルの一部の監視カメラの映像が映っている。

さすがにホテルのレストランでパソコンを開くのははばかられたので、今日はパソコンでハッキングした防犯カメラの映像をタブレットに飛ばしている。ついでに、回転装置もこのタブレットでちょっと操作をすればパソコンに信号が送られ、回転装置の回転数をいじれるようにしておいた。

ハッキングしたパソコンはレストランの1つ下の15階のに隠してある。

5階のディナーショーが行われているホールの映像を見る。舞台に大きな大砲が運ばれてきた。

事前に盗み出しておいたプログラム通りだと、これがフィナーレのはずだ。やはり、もうショーは大詰めらしい。

奴らは一体どのタイミングで仕掛けてくるのだろうか。

そろそろ仕掛けないとショーが終わってしまうが……まさか、ショーが終わってからか？なんて考えていると、突然ホールの一角から白煙が上がった。どうやらおっぱじめるらしい。

白煙の近くにいた人たちは驚いて立ち上がり、舞台に向いていた観客の顔も全て白煙の方に向けられた。

白煙が少しずつ晴れていき、そこに現れたのは見慣れた白いマントとシルクハット。

白い男は宝石を盗むでもなく、そのまま会場の外へと走りだした。

後を追うように、中森警部と2人が走り始めた。どうやら、念の為に警察が紛れ込んでいたらしい。

ガタッと少し離れたところで音が鳴った。どうやら、レストランに来ていた1人の男性が立ち上がったときになった音らしい。

立ち上がった彼は、そのまま慌ててレストランを飛び出して行った。展望レストランにも警察を入れていたのか、中森警部。