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ところでこれ、本当に貰ってもいいのだろうか。
だってこんな、こんなに彼のものと似たものを持つなんて、まるで……。
「最近銃撃ってくる奴がいたり物騒だからな……。奴らのこともあるし、あった方がいいだろ？」
私がワイヤー銃を前に躊躇っているのを察したのか、黒羽くんはそういった。
どうやら、私の自衛手段、逃走手段として用意してくれたものらしい。
意を決して恐る恐るワイヤー銃に手を伸ばし、そっと持ち上げてみる。
思っていたよりも軽く扱いやすそうだ。グリップはどう測ったのか分からないが、私の手にピッタリ馴染む大きさである。
キッドのトランプ銃と似たデザインのそれを何となく頭上に掲げてみる。
ワイヤー銃は天井の照明に照らされて鈍く光を放った。
ドクドクと鼓動が早くなる。少し、気分が高揚していた。
これ持ってると、まるで……私がキッドの味方になったみたい。
「……ありがとう」
ワイヤー銃を見たまま、黒羽くんに、寺井さんに、伝える。
ありがとう、私を味方にしてくれて。架空の人物水野じゃない、私自身を味方にしてくれて。
「おう」
短く言う黒羽くんの方に目を向ける。彼は至って普通な顔をしていた。
きっとこんなことを考えているのは私だけなんだろうけど、それでも嬉しかった。
正体を明かして以降、心の片隅にしこりみたいな不安があった。
気にしないようにはしていたが、水野じゃなくなった私は彼に受け入れられるのか、正体を明かしたことで関係が変わるのが酷く怖かった。関係解消なんて言われたら、私はパンドラを探すことができなくなるのだから。
でも黒羽くんは、寺井さんは、私を、AAを味方にしてくれた。
ただの正体不明の協力者じゃなくて、AAという味方にしてくれた。
黒羽くんとしっかり目を合わせて、ニッと笑う。
「私、頑張るね！」
「いや、危なかったら逃げろよ？ そのためのワイヤー銃だからな？」
そう言った黒羽くんは呆れ顔だった。
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作者名：もへじ | 作成日時：2023年7月3日 0時
