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予告をやめにするのに、このデータをいったい何に使うというのだろうか。
「あの宝石、多分奴らから守らなくちゃならねーかもだからな」
「ああ、私たちも思ってたようにパンドラかもしれないから、ね」
黒羽くんが思い出したことで、赤い涙がパンドラの可能性はほぼないと私たちはわかっているが、組織の奴らはそんなこと知らないだろう。
おそらく、昨日の私たちのようにあれをパンドラだと疑っている。つまり、狙ってくる可能性が高いということ。赤い涙を奴らに渡すわけにはいかにので、守る必要があるかもと、そういうことらしい。
パンドラじゃないなら私とは関係がないが、ここまで関わってしまえば見て見ぬふりもできないので、宝石を奴らから守るという黒羽くんを手伝うことにする。これは明日の夜までにもう少し作戦会議が必要になりそうだ。
「じゃ、遅くなると青子がうるせーし、詳しくはまた明日の夕方で」
「え、夕方からで間に合う？」
中森さんがご飯を作って待っているからという、アツアツな理由で解散しようとする黒羽くんに、少し驚いて尋ねる。
赤い涙を奴らが奪うチャンスがあるとすれば、それはおそらく明日の夜に行われるホッパー奇術団のラストショーぐらいだろう。となると、せめてお昼ぐらいから作戦会議を始めないと間に合わなさそうだが……。
なにか用事でもあるのだろうかと思い聞くと、何故か黒羽くんは少し恥ずかしそうに目を逸らした。
「や、明日の昼はちょっと青子と映画見に行くから……」
思わず、あきれて半目になった私はきっと悪くない。
いや、たしかにいつ黒羽くんが中森さんとデートに行こうがそれは彼らの勝手である。しかし何も明日でなくてもいいじゃないか。
ご飯はほぼ毎日朝晩彼女の手作りで、週末はデート。これでなんと結婚どころか付き合ってすらいないのだから、びっくり通り越してあきれる。
本人たちはただの幼馴染だと言い張るが、絶対そんなことは無い。同じように幼馴染の私と翔の関係はそんなものではないのだから。
それにしても、私はカメラのハッキングや当日の警備態勢に変更がないかなど色々しなければならないというのに、黒羽くんは可愛い可愛い幼馴染とデートに洒落込む腹積もりとは一体どういう了見なのか。なんだか呆れを超えて腹が立ってきた。
はあ、とため息をついてから、私は半目のまま、恥ずかしそうな彼に言う。
「早く結婚しなよ」
「けっ……！ そ、そんなんじゃねえよ！！」
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作者名：もへじ | 作成日時：2023年7月3日 0時
