舞台袖から-3 ② (ページ20)

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それにしても、何故ルビーなのだろうか。

ルビーはコランダムという鉱物から成るが、赤をルビー、その他の色をサファイアと呼ぶ。なので青いルビーは本来サファイアと呼ばれるはずなのに、何故かこの宝石はルビーらしい。

特殊条件で赤く光るとか？なんて考えてみてハッとした。

「パンドラ……」

ぽそっと声がもれた。

ジュースを飲んでいた黒羽くんが、バッとこちらに顔を向ける。その目は大きく見開かれていた。

「有り得るな。パンドラなら月にかざすと赤く光る」

そう言いながら黒羽くんは顔をどんどん顰めていく。

もしこの宝石が彼のお父さんの死や私の父さんの失踪の原因であるパンドラなのだとしたら。

そう考えると自然と眉間にシワがよっていく。

「だからサファイアじゃなくて、ルビー……」

グッと手に力が加わって拳を握る。爪が掌にくい込んで少し痛いが、その痛みが私をどこか冷静にさせる。

「A、その辺も入念に調べといてくれ」

そう言った黒羽くんの声はいつもより低かった。

普段教室で見る彼とは違う雰囲気に、キュッと気が引き締まる。

気合い入れて仕事をしようと思った時、今までの雰囲気を払拭するように、黒羽くんがニカッと笑い、思い出したように言った。

「あ、明後日の港ホテルのディナーショーで盗むから、それまでによろしくな！」
「もっとはやく言ってよ！！！」