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「ど？ 上手くいった？ 匂わせ」
お昼時の教室でお弁当に入った卵焼きを箸で持ち上げると、結衣がそんなことを聞いてきた。
匂わせ？と一瞬何のことか分からなかったが、そういえばそんなのあったなと思い出した。黒羽くんと色々話してすっかり忘れてしまっていた。
「ああ、そうそう、めっちゃ上手くいった 」
「でしょでしょ！？ 」
やっぱり匂わせは云々と興奮気味に語る結衣に、今日も元気だなあ、なんて思いながらつまんでいた卵焼きを口に入れる。
卵焼きを飲み込んで、結衣が少し落ち着いた時に口を開いた。
「ほんと、ありがとね、結衣」
「まあ、それほどでもあるけどね〜」
結衣の提案が無ければ私はまだ悩み続けていたかもしれない。
一度箸をおいて、きちんと結衣の顔を見てお礼を言うと結衣は胸を張ってそう言った。誇らしげな彼女に小さく笑みをこぼす。
ところが結衣は、すぐに顔を少しつまらなさそうなものに変えた。
「あーあ、それにしても、Aもついに彼氏持ちか……寂しくなるね〜」
箸を口に運びながら結衣が言ったのはそんなことだった。
結衣が言ったそれは私には全く身に覚えの無いもので、驚いて思わず「え？」と声が出た。ついでに、箸で持ち上げたおかずがお弁当箱の中に逆戻り。
今彼女は何と言ったのか。彼氏持ち？ 私が？
どうやら結衣の中では、本人があずかり知らぬところで私は彼氏持ちになっているらしい。
「え？って、何でAがびっくりしてんの」
「だって私、彼氏なんて居ないけど……」
何故か呆れ顔の結衣にどうしたらいいのか分からなくて、宙ぶらりんの箸を持つ右手をそのままに言う。
すると今度は結衣が驚く番だった。彼女は箸を持ったまま机に手のひらを叩きつけて、立ち上がる。その反動で椅子が大きな音を立ててひっくり返った。
「え！？ 告白させちゃおう大作戦、成功したんじゃないの！？」
何その作戦名、初めて聞いたんだけど……。
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作者名：もへじ | 作成日時：2023年7月3日 0時
