舞台袖から-3 ② (ページ13)

今日:50 hit、昨日:45 hit、合計:11,641 hit

3-05 ページ13

するりと私の手を滑って箸が落ちた。

しかし、私の頭を占めていたのは落ちた箸ではなくて、ニュースキャスターが名前を発したある人物だった。

「怪盗、キッド……」

中年のニュースキャスターが興奮気味に話すのは、8年前に姿を消したはずの怪盗が再び現れたというニュースだった。

怪盗キッド、それは数ヶ月前に見た、父さんのパソコンにあった名前。

父さんのパソコンを見て以降、パンドラを探してみようとしたが、パンドラを判別する方法は月にかざすしかない。

しかもパンドラの可能性があるのは博物館や美術館に展示されているようなビッグジュエル。ただの一般人の私が調べさせてくれなんて言って調べられる代物では無い。

ビッグジュエルの情報を集めることは出来ても、それがパンドラかどうかを確かめる術がなかった。

こういった理由でパンドラ探しを半ば諦めていた時に飛び込んできた、怪盗キッド復活のニュース。驚かないはずがなかった。

キッドはまだパンドラを探しているのだろうか。探しているなら、何とかして協力にこぎつけないだろうか。

もし、もし彼が協力してくれるなら、パンドラを見つけることも出来るかもしれない。そしたら、そしたらきっと、

「父さんにも……」

会えるかもしれない。

一度は消えかかった希望の炎がもう一度私の心に灯った瞬間だった。

それからは速かった。

キッドが予告を出せばその建物の構造から警備体制、宝石まで様々なことを調べあげ、さらに逃走経路を予測した。そしてキッドが通りそうな、羽を休めそうなビルで待ち伏せた。

正直、キッドがまだパンドラを探しているのかはかけだった。

パンドラの名前を出しても反応しなければ、パンドラが見つかる可能性はまた劇的に小さくなる。パンドラが見つからなければ私はこのまま、何も分からないままだ。

半ば祈る気持ちで、でもそれを表には出さないように私はわざとパンドラの名を口に出して言った。

キッドがそれに反応したのはラッキーだった。それからはなんとか協力にこぎつけ、今に至っている。