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美術館前の広場に翔の笑い声が響く。あまりの豪快な笑いっぷりに2人は驚いて同時に翔を見る。すると彼は笑いすぎて流れた涙を手の甲で拭って息を整えた。
「……はぁ、ああ、笑った」
「急に笑ってどうしたの?」
なぜ笑ったのか分からなかった青子は首を傾げて尋ねる。隣の快斗も同じように首を傾げていた。
「いや、ケンカップルってこういうのを言うんだなって思って」
「カ、カップルじゃねーよ!!!」
「カ、カップルじゃないよ!!!」
2人の声が被る。そんな様子がまた面白かったのか、翔はもう一度吹き出してからお幸せに!!なんて言って逃げるように走って行ってしまった。
「くそ〜、あいつ逃げやがって……」
「一緒に回ればよかったのにね」
快斗は、茶化すだけ茶化して逃げていった翔に腹を立てた。しかし、翔だけではなく、そんなことを言った青子にもイラッとした。
快斗は青子とデートだと楽しみにしていたのに、青子は翔がいた方が良かったのだろうか。人の気も知らないで、とむしゃくしゃしながら、快斗はやり場がない苛立ちを抑えるために青子の髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。すると青子は快斗を上目遣いで睨んできた。
「ちょっと、何するのよ! てかなんでそんなに不機嫌なのよ!!」
上目遣いなのがちょっと可愛くて、快斗の気持ちが少しだけ落ち着く。残ったぶんを大きなため息と一緒に吐き出してから別に、と返した。青子は納得できないらしく、しばらくぷりぷりと怒り続けていた。
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作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時