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じゅー、という肉汁がやける音が響き、食欲を掻き立てる匂いがする。運ばれてきたハンバーグとステーキの乗ったプレートに思わず頬が緩む。ちょっと奮発して1番いいメニューにした。向かい合った場所に座るAもスパゲッティを目の前に嬉しそうにしている。
「テストお疲れ。乾杯!」
「乾杯!」
さっき入れてきたコーラを掲げてそう言うと、Aもジュースの入ったグラスを持ち上げて同じように声を上げる。
もう16年一緒に居るのに、こうして学校帰りにファミレスに寄るのは何気に初めてな気がする。それぞれに友達がいて、お互い一緒に帰ったりすることはまず無かったからかもしれない。
やっぱり、たまにはこういうのも悪くない。ただ、一つ気になることもあって尋ねてみることにした。
「そーいや、今日は友達と帰んなくて良かったのか?」
「ん? うん。なんか録画見返して予習するとか何とか言ってた」
「予習? なんの?」
「え、多分キッドの……、ん?」
そこまで言ったAは何故かキッドの、から先を繋げずに首をひねり始めた。
キッドと言えば今日は時計台の予告日だったはずだということに気づいて、予習ってそういう事かと1人納得する。俺にはあまりよく分からないが、キッドファンの人達は録画したものを見返して予習とやらをするのか、という新しい発見に少しだけ興味を引かれる。
「今日の予告、見に行ってみるのも悪くないな……」
確か、快斗がキッドファンだった筈だ。誘ったら来るだろうと思い、そう呟くと目の前の女は急に立ち上がって大きな声を上げた。
「あああああ!!!!忘れてた!!」
正直、周りの人の視線が痛すぎて1発殴ってやろうかと思ったが、理性で何とか衝動を抑えた俺を誰か褒めてくれ。
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作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時