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2-03 ページ37

普段とは異なり、昼食時なのにがらんとした教室。
机に突っ伏す幼馴染、Aを、鞄を持った俺は見下ろしていた。

「赤?」

一言だけ、簡潔に尋ねた。Aにはそれでしっかり意味が伝わったらしい。

「……聞かないで」

かろうじて絞り出された、悲壮感漂う声が耳に届いた。その声と言葉に、だめだったかと察する。プリントは提出できているはずなので、とりあえず進級の危機は脱しているだろう。しかし、あれだけ勉強しても赤かもしれないとは、Aの古典嫌いは筋金入りのものらしい。

なんとかなる、みたいな下手な励ましをしても逆効果になりそうなのでやめておく。しかしいつまでもへこまれていてはこちらの調子が狂う。朝母さんに託された伝言で、とりあえず気を紛らせてもらおう。

「母さんが昼飯食べに来いって。オムライスらしいから元気出せよ」
「行くぅ……」





なんてやり取りをしていたはずのAは、今俺の目の前で至極幸せそうに母さんが作ったオムライスを頬張っている。

今朝母さんから、昨晩の礼で昼飯にAの好きなオムライスを作るから呼べと言われ、Aに家に来るように言った。さっき迄の落ち込み様をとても想像できないような顔で口を動かすAに、なんだか呆れを通り越した何かを感じる。柄にもなく落ち込む姿に少しだけだが心配したというのに、当の本人は何処吹く風。俺の心配をかえせ、と心の中で毒付きながら俺も口を動かして昼飯を食べる。行儀は悪いが、スマホを弄りながら食べているとひとつのニュースが目に付いた。

「お、あの時計台キッドが予告状出してんのか……どうやって時計台盗むんだ?」
「さあ? でもあの時計台、なんか移築されんでしょ? ならキッドが持って行っても行かなくても同じ。どっちでもいいよ」

オムライスから目だけを上げて、でもどこか少し寂しそうにAはそう答えた。

あそこの時計台は結構思い入れがあるので、少し寂しさも感じる。でも、Aの言う通り、結局移築されるならキッドが持って行っても同じか、と思った俺はそうだな、と適当に返して口を動かし始めた。

食べ終わったらまた勉強をしなくてはならない。テスト期間早く終われ、なんて思う昼飯だった。

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作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時

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