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「まっっったくわかんない……」

シャープペンシル片手に古典のプリントとにらめっこをする。かれこれもう半日はこうしてる気がする。

いや、実際は午前中は得意な数学をしていたし、お昼は英語だったから半日古典ばかりをしている訳では無い。しかしそう思ってしまうほどに私は古典が出来なかった。

「だーかーら、これは道兼のセリフだって言ってんだろ!」
「え、これじゃないの?」
「これは兼家」

さっきからずっとこの調子だ。先週1週間を仕事に使ったおかげで、古典と現代文の勉強は殆どやっていない。理系科目はやった。やる気があったから。

だが、どうも苦手科目はやりたくない。というか、古典も現代文も勉強方法が私には分からない。そのため、やろうとしても何をしていいのか分からない。毎回そんな感じだ。

今回は学年末ということもあって、久しぶりに翔に頼み込んで教えてもらうことにした。翔は理系と英語極振りの私とは違い、特に得手不得手の無いオールマイティだ。なので、次のカフェの春の新作と引き換えにOKを貰い、日曜日の今日、私の家で勉強をしていた。

翔は頑張って教えてくれているが、単語の区切れさえ分からない私が古文を読めるはずもなく、先程から翔のため息がやまない。幸せが逃げるぞ、なんて言ったあかつきにはハッ倒されそうなのでやめておく。

「これは花山天皇だよね?」
「これは安倍晴明」
「は? どっから湧いてでたの!?」
「こっから」

こんな調子で主語が誰かを考えるところから始めている私を、翔は数学をしながら相手をしてくれている。

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作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時

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