舞台袖から-2 (ページ26)

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屋上の入口のコンクリートの壁を上手く利用して銃弾を避ける。相手が銃を撃つのが下手だったのは不幸中の幸いだ。まさか最初の2発を、そこそこの至近距離なのに外してくれるとは思わなかった。

肩で息をしているので正直そろそろ限界が近い。咄嗟に走り出したのでパソコン等は元の場所に置いたままだ。どうしようかと上手く働かない脳を何とか動かしていると、インカムからとんでもないことを言われた。

『オレが合図出すから、荷物持ってビルの西側から飛び降りろ』
「は？」

死刑宣告のようなそれに思わず声が出る。どういう意味がさっぱり理解出来ず、思考と行動が同時に止まる。だがそれは足元スレスレに飛んできた銃弾によって一瞬にして再会させられた。

「そんなの無理！！」

飛び降りたところで、キッドとは違ってハンググライダーも何もない私は死ぬしかない。できるわけが無いだろ！という気持ちも込めてそう叫んだが、彼はそんなことはお構い無しに怒鳴る。

『荷物持て！！！！！』
「は、はい！！」

聞いたことの無い彼の怒声に、弾かれたように返事をして、走ってパソコンとその他機材の入った鞄を拾って両手で抱える。

振り返ると、目の前には銃を持った男。後ろはフェンスがある以外には何も無い。1歩、また1歩、と近づく相手から逃れるために後ろに下がると、腰に低いフェンスが当たった。

「……！、っ」
「はは！追い詰められちまったな！！」

なにか、なにか無いのか、そう思って周りを見渡すも、少し遠くの方でキッドがビルの屋上より少し下の高度で飛んでいるのがちらりと見えただけだった。