ページ ページ25
『……キッド、貴方物騒なお友達がいるのね』
「……っ!まさか!」
「ははは、漸く気づいたようだな!」
それは協力者である水野の声だった。恐らく彼女も銃を向けられているのだろう。しかし抵抗する手段を持っていないと思われる彼女は、ただ言われる事に従うしかない。まさか協力者がいることを奴らに知られているとは思わなかった。
「彼女を解放しろ」
普段より幾段か低い声を出す。だが相手の方が有利であるこの現状では、それはなんの意味も果たさなかった。
「貴様がそれをこちらに渡したらな」
「……」
ジャケットに手を入れて、水色に輝く石を取り出して投げる。部下の1人が受け取ったのを確認してから声を出す。
「渡したぞ。彼女を解放しろ」
「ああ、解放しよう。……ただし、引き金を引いたあとでな!!!」
直後、奴らの持っているトランシーバーからカシュッ、というサイレンサーの付いた銃の音と、ひっ!という悲鳴が上がる。
「くそ!!」
急いでインカムのマイクをオンにする。
「おい! 今どこだ!!」
目の前には奴らがいるが、そんな事には構っていられない。まさか彼女が狙われるとは思っていなかったから、組織のことは特に伝えていなかった。トランシーバーからは相変わらず静かな銃声と、慌てた悲鳴が上がっている。とりあえず彼女が生きていることは確認出来た。
『田中眼科のあるテナントビルの屋上!』
インカムから返事が帰ってくる。通りを1つ挟んだところにあるビルを確認する。暗くてここからではよく分からないが、彼女はそこにいるようだ。続けてインカムに向かって喋ろうとすると、足元に銃弾が刺さった。
「動くなよ。貴様には死んでもらう」
その声に思わず舌打ちをする。銃を向けてじりじりと近づく奴から離れるように、オレはじりじりと端に追い詰められていく。もう後はない。追い詰められてしまった。
22人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時