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柱にもたれかかっている翔に向けて手を振って駆け寄る。買ってきたチケットのうち1枚を彼に渡す。

「チケット売り場めっちゃ混んでた」
「やっぱスマホで買うべきだったか……」

私がチケットを渡しながら文句を言うと、翔はそうボヤいた。チケットを買うだけで20分程取られてしまった。
ブルージュエリー展2日目というだけあって人が多く、色んなところで列ができている。翔からチケットの代金を受け取って財布に入れる。

「んじゃ行こーぜ!」

翔が、私が財布をカバンに戻したのを確認して言ったその言葉にうん、と短く返して入口に向かう。そこにはやはりゲート型の金属探知機があった。澄んだ海(クリスタルオーシャン)のチェーン部分には純金が使われていた筈なので、システムをハッキングして、純金に反応しないレベルまで検知レベルを落とせばここから逃走することも出来るな、と考えながらゲートを通る。

ゲートを通る際に出した手荷物を受け取り、翔がゲートを通るのを待つ。待っている間に辺りを見渡して監視カメラの位置を確認する。死角を作らないように配置されたそれはエントランスだけでも複数あった。

「おまたせ」

後ろからかかった声に振り向くと、翔はいつ取ってきたのか、パンフレットを開いていた。彼はそれを眺めながら、ブルージュエリー展以外にも期間限定でペカソの絵が何枚か展示されていることを教えてくれた。美術館に学校行事以外で来ることなんてあまりなかったのでなんだか新鮮な気分だ。

順路を進んでいくと有名なゴッホやダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの絵が見えてくる。芸術に造詣が深い訳では無いのでよく分からないが、そんな私でも感嘆の息を漏らすものが殆どだ。美術品の下に着いている解説を見てみると、描かれた当時の社会情勢などが載っているものもあり、ためになる。

最初は下見もしてみようか、なんて思っていたが、そんなことはすっかり忘れて、こういうのもたまには悪くないな、と思いながら美術品を見てまわった。

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作者名:もへじ | 作成日時:2023年4月4日 22時

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