1《ライアス・リュークリーク》過去のある日 ページ8
「んー、任務完了、と」
パンパン、と手をはたく。専用の通信機を取り出して、同じ内容を仲間に伝えると、俺は死体がいる部屋から去った。
今日は、人を1人殺すだけの簡単な仕事だった。いや、命を奪うのに、簡単も何もないわけだが、こんな仕事を続けていると「そういう感覚」になってくる。
俺の所属する集団は「戦闘屋」と呼ばれる。正式名称は『シュラハティ』だ。最初は少数精鋭で、暗殺業やら、どっかの戦いの加勢やらをしていた。つまり、人殺しが生業ってわけだ。だが、最近は規模が大きくなって、もうすぐで組織と呼べそうになるくらいだ。仕事の幅も広がって、武器商人まがいの事や兵器開発、戦争への傭兵派遣などをしている。
そのせいで、昔からシュラハティにいる俺は、幹部なんて地位になっちまって、こういう人殺しの仕事もめっきりしなくなった。
部下なんて持つのは性に合わねぇんだがな……。
それに、汚れ仕事を直接していないと、自分がそういう人間……平気で、人殺しができ、人を不幸にできる、悪側の人間だという事を忘れそうになる。
……いや、忘れるはずがねぇんだがな。多分、忘れる事を恐れてるんだ。
「あー、こんな考え、らしくねぇな」
首を振って、懐から煙草を取る。箱から1本、トンっと出すと、ライターで火をつけた。
さっきまで真面目なサラリーマンを装っていたので、整えた髪ときちっと締めたネクタイが妙に息苦しい。手で乱暴に髪型を乱して、ネクタイを緩める。ついでにシャツのボタンも2個開ければ、いくらか気分がマシになった。
今いるここは、屋上だからか、風が強い。単にそういう気候ってだけかもしれない。
「はぁ〜……」
煙草の煙をわざとらしく吐いて、一緒にに溜息も吐き出す。すぐに風に流され、煙は掻き消えた。
「長生きできる気がしねぇなぁ……」
長生きしたい理由もないが。
「……」
もう一度、今度は自然に煙を吐く。煙は、下に流されながら、やはり消えていった。
しばらく、屋上からの景色を、地上で行き交う人間達を見つめて、くるりと身をひるがえした。屋上の扉を開け、下に降りる。
そういえば、同僚が健康を考えて電子煙草にしたと言っていた。俺も、そうしようかな、と少し考えた。
2《ライアス・リュークリーク》小話−1→←2《瀬川 創平》過去−2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夕暮れの紅猫(プロフ) - へしろさん» はい、頑張ります。 (2017年8月11日 22時) (
レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
へしろ - 夕暮れの紅猫さん» そうですね（笑）コーゾーの漢字も初めて出したので、楽しみにしています。 (2017年8月11日 21時) (レス) id: 8a764b3567 (このIDを非表示/違反報告)
夕暮れの紅猫(プロフ) - へしろさん» いえいえ。こちらも、ライアスをよく使ってくださってありがとうございます。過去話、うまく書けるといいのですが……(しかし、ここまでライアスの話が多くなると、実はライアスが3人の中で一番気にいってるキャラとバレてしまう(><)) (2017年8月11日 11時) (レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
へしろ - いやぁ、ライアスさんカッコよすぎです。惚れるわ……。コーゾーのほうも書いてくださってるようで、ありがとうございます！ (2017年8月11日 11時) (レス) id: 16521b6000 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夕暮れの紅猫 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年8月3日 2時
