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4《ライアス・リュークリーク》小話−3 ページ11

「参考程度に聞きますが、どこから気付いたのですか?」
 所長が眼鏡を押し上げて、彼に聞く。その声はどこまでも冷たく、聞く者をぞっとさせる響きがあった。ほ、本当にスパイなんだ……。
 対して、彼は銃を向けられているにも関わらず、先程と変わらないリラックスしたような自然体だ。
「スパイかな? って思ったのは、割と最初からだ。お前ら、シュラハティとは違う血腥さがあるからよ。別組織の奴らだな、と。んで、確信したのは今だよ」
「……そうですか。長年の勘と言う奴ですかね。そればかりには敵いませんね」
 所長がゆらりと立ち上がった。
「それにしても、幹部が1人で来たというのは僥倖でした。簡単に片付けられます。いえ、このまま捕らえて、色々情報を吐かせるのもアリですね」
「そう上手く行くもんかねぇ」
 彼は、尚も面白そうに目を細め、所長を見つめる。
「この状況でよくそんな事が」
 所長の声はそこで途切れた。突然、複数の窓が割れ、スパイではなかった私達に銃を向けていた何人かの者達が倒れたからだ。頭が綺麗に撃ち抜かれていた。
 その一瞬の隙に、私達は動いた。例え昨日まで仲間であった相手であろうとも、敵を前にした時、どうすべきかは教え込まれていた。
 銃を弾き、投げ飛ばす。腰の銃を引き抜いて、その足を撃った。私が撃つと同時に幾つかの銃声が聞こえた。その中には敵のものもあり、仲間の呻き声とスパイの呻き声が入り混じる。
 窓の外からの援護射撃もあり、倒れている数はスパイの方が多そうだ。……かく言う私も、銃弾が腹をかすめて、とても痛い。だが、痛みに耐える訓練は受けている。これくらいなら、まだ大丈夫。

 そのまま戦闘が始まるかと思いきや、
「はい、ストーップ」
 所長を組み伏せ、銃をその頭に向けているリュークリーク幹部の声で止まった。
「えー、お前らは仲間が人質に取られたら、動けないタイプか? 良かった良かった」
 その口調が内容に反して世間話の様な調子で、気が抜けそうになる。
「じゃあ」
 だが、

「そのまま動くなよ」

 彼からいきなり放出された殺気に、皆、その場に縫いつけられた。重圧すら感じるソレは、有無を言わせない力があった。
 仲間であるはずの私ですら、何よりも危険だと、本能が警報を鳴らす。汗は流れるのに、背筋は氷で撫でられたかのように冷たい。自分がこのまま死ぬ幻覚すら見そうだ。そして、確信できたのは、この場の全員が同じ気分を味わっている事だ。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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夕暮れの紅猫(プロフ) - へしろさん» はい、頑張ります。 (2017年8月11日 22時) (レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
へしろ - 夕暮れの紅猫さん» そうですね(笑)コーゾーの漢字も初めて出したので、楽しみにしています。 (2017年8月11日 21時) (レス) id: 8a764b3567 (このIDを非表示/違反報告)
夕暮れの紅猫(プロフ) - へしろさん» いえいえ。こちらも、ライアスをよく使ってくださってありがとうございます。過去話、うまく書けるといいのですが……(しかし、ここまでライアスの話が多くなると、実はライアスが3人の中で一番気にいってるキャラとバレてしまう(><)) (2017年8月11日 11時) (レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
へしろ - いやぁ、ライアスさんカッコよすぎです。惚れるわ……。コーゾーのほうも書いてくださってるようで、ありがとうございます! (2017年8月11日 11時) (レス) id: 16521b6000 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夕暮れの紅猫 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月3日 2時

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