【MHA】雨のち、虹色。【轟】 (ページ5)

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生唾を飲んだ。緊張のせいか口内が乾燥している。轟はきょとんとした顔で私を見た。

(何を言ってんの、私はっ)

恥ずかしさを隠すためだけに、後から“なんてね”と笑ってみせる。きっと顔はひきつっているだろう。冗談だったと思ってくれ、と言わんばかりに私は乾いた声で笑い飛ばした。

「…。」

轟からの返事が返ってこない。これじゃ、私が一方的に話してるだけじゃないか。しかし、私には無口な人を相手することができる高度な会話力なんて備わってはいない。何を話したらいいのだろうと、ひたすら考えてみるがまったく思い浮かばない。ゆっくりと轟の唇が動く。それは妙に色っぽく、艶がかって見えた。

“好き”

そんな言葉が耳にすっと入り込んだ。驚いて、自分の目が見開く。

｢＿＿て言ったら、高山はどうするんだ？」

ぽつり、と落とすように轟は言った。純粋に私を見る目は、普段通りに動いていた私の動悸を更に早くさせた。

｢べ、別にどうもしないよ」

そう言って、合っていた目を逸らした。

こんなことで動揺してしまうだなんて。何人もの男と遊び、触れ合ってきたというのに。それなのに、何故こんなにもドキドキしているのだろう。

顔が熱く、耳にまで熱が集まっている気がし、轟に見られないように顔を下に向けた。

｢……そうか」

何気無く轟はそう返したが、目にはどこか淋しそうな色が少し感じ取れる。その反応に意味はあるのか。ないのか。人の心を読めるわけでもなく、感情を知ろうとすることを諦める。

「じゃ、じゃあさ」

自分のなんともいえない感情と共に、声を絞り出す。

「私が好きって言ったら、どうするのよ」

敢えての逆パターンで、轟の感情を自然に探ってみる。私は知ってどうするのだろう。自分のことだというのに、全く予測がつかない。

轟は黙った。今回何度目の沈黙になるだろう。数秒ほど喋らない時間が続く。

真っ直ぐと私の目を見だしたかと思うと、轟は真剣な眼差しになった。

「＿＿そしたら俺は、高山に真剣な交際を申し込むことにする」

「……～っ！？」

胸が大きくドクンと高鳴った。それは、時が止まったかのように一瞬に。心臓がドクドクと激しく脈打つ。

瞬きをせずに見開いて、轟のことを見た。あまりにも真剣な顔で、それが嘘には聞こえなかった。彼は本気で言ったのだ。

「じゃあさ」

言いながら、立ち上がる。

「私のこと落としてみてよ」

轟の胸ぐらを引っ張り、顔を近づけて言った。